燃料費の増加は円安が原因

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電気料金値上げの本当の理由は何か。原発が稼働していないので火力発電の燃料費が嵩み、電気料金値上げをしなければならなくなったと思っているなら、それは正しくありません。意図的かどうかは不明ですが、TVや大新聞は原発再稼働のための洗脳操作を行っています。

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先日私は、火力燃料費の大幅増加の主因は昨今の「円安」による「輸入代金の大幅増加」と「国際価格と不釣り合いな輸入契約」によるものだと説明しました。そんなのオマエの言い分だろ、と思った人もいたかもしれません。そうではありません。ちょうど今週号の週刊ダイヤモンド(2015年1月31日号)に野口悠紀夫さんが私と同じ見解を表明していましたので、紹介しておきましょう。

日本の原油輸入額は年間14兆円程度。原油価格が100ドルから半減した現在、為替レートが一定なら7兆円超の輸入減になる。年間7兆円といえば、消費税3%に相当するし、火力発電用天然ガス(LNG)の輸入額とほぼ同じ。原発停止で火力発電の燃料費は3兆円ほど増加したが、この増加分を優に吹き飛ばす。(以上、野口氏の言い分を要約)

数字を提示しながらの言い分で説得力があります。3.11で原発停止になった後、代替の火力発電で燃料費は大幅に増えたのですが、それも最初の頃だけ。昨今の原油安で原油の輸入代金は大幅に減っているけれど、為替レートが円安に振れたので、減少幅が圧縮されたということ。原発が全停止していても何の問題もなかったというわけです。

もっと詳しく知りたい人には、日本総研のレポートを案内しておきましょう。それによると、「火力発電の燃料消費量の増加に伴う輸入量の増加が、原油・LNGの輸入額に与えた影響は限定的」で、「資源価格や為替相場の行方が、原油・LNGの輸入額を大きく左右する見込み」と説明されています。(Recerch Eye, 2014-003  日本総研より)

出典は、日本総研 のRecerch Eye, 2014-003 )

出典は、日本総研 のRecerch Eye, 2014-003 )

火力発電の燃料であるLNGの輸入額の変動要因を詳細に調べた表からもわかるように(上図)、3.11直後の2011年度、2012年度は価格要因が数量要因よりも影響大。これは原発事故後でLNG需要が増えるという足元を見透かされ、国際価格よりも高い代金を生産国から請求され契約したのが理由でしょう。これがすなわち先に私が示した「国際価格と不釣り合いな輸入契約」のことです。

また2013年度の一番の要因は為替であることが一目瞭然で、昨今の燃料費高止まりは為替が原因(円安が原因)だと云ってよいでしょう。

いずれにしても、燃料費の高止まりは数量要因ではありません。一番の原因は円安に大きく振れた為替と奇妙な価格です。日銀によるインフレ誘導は見方を変えれば原発再稼働の準備にもなっていたということに注意を払うべきでしょう。

電力料金を値上げするのは原発再稼働の遅延による火力発電の燃料費増加だ、そんな雰囲気を作り出していたのは誰でしょうか。TVや新聞が本当の理由をきちんと伝えないのはメディアの無知か、あるいはメディアが誰かの意向に沿った洗脳操作をしているということ。何度も繰り返しますが、NHKや大新聞をそのまま信じてはいけません。

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