Ticketpreis
2025/11/23
ルツェルン音楽祭レポートも終盤。予定ではあと2、3つ。
今回のルツェルン音楽祭のメインの演奏会場はKKL大ホール。会場経費、楽団人件費、交通費、宿泊費、管理経費などを積算すれば、どの楽団でも同じような額になりそうですが、現実にはそうなっていません。ソロとオーケストラで違うのはわかりますが、オーケストラ間で価格差があるのは人気や評価の違いと云ってしまえばミもフタもなし。今回はチケット代金について少し考えてみます。(演奏者を多数取り上げるので、以下は敬称略です)
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今回のルツェルン音楽祭のチケット代金をS席で比較してみましょう。ピアノのソロ演奏ではランランがCHF200、シフCHF170 、内田光子CHF150、イゴール・レヴィットCHF170、・・・というものでした。みんな世界トップクラスの演奏者ですからそれなりに高い。日本円に換算すると3万円台。中でもランランが一番人気で、ソロ演奏家の中でチケット代金が一番高いのに早々に売り切れました。
オーケストラは、世界3大オーケストラと謂われるベルリンフィル(ドイツ)、ウィーンフィル(オーストリア)、ロイヤルコンセルトヘボー(ネーデルラント)と、主催元のルツェルンフェスティバルオーケストラ(スイス)がCHF320で同料金。それ以外ではロイヤルフィル(英国)がCHF290、パリフィルCHF290、サンタ・チェチーリア(イタリア)がCHF240、ラジオフランスフィルCHF240、マーラーチェンバー(ドイツ)がCHF200、・・・となっていました(いずれもS席)。
値段の違いはまず音楽界や世間での評価の違い。次にプレミアムの上乗せ。どんな代金なら観客は納得できるのかを考慮しながら資本主義的な経済原則で細かく値付けが行われる訳ですが、いずれにしてもこれが現在の世界的な相場なのでしょう。
ところが、その世界的な相場が歪んでいるのが日本のチケット代金。驚くことに日本のチケット代金は本場よりも思いのほか安いのです。あるオーケストラの例で比較してみましょう。
こちら、先日11月11日京都コンサートホールで行なわれたロイヤルコンセルトヘボーの演奏会へ出かけました。前半の共演はピアノのアレクサンドル・カントロフで聴き応えのある素晴らしい内容でしたが、後半はルツェルンで聴いたのと同じで、バルトークの「Concerto for Orchestra」。前半が違いますがマケラ指揮と後半の曲目はいっしょで、ルツェルンではS席が約6万円なのに日本では31000円! 日本へは長距離渡航が必要なのに何故? ちなみにこの価格差はウィーンフィルやベルリンフィルでも同様です。
日本のチケット代金がルツェルンの半額というのはいくら日本国内の経費が円安で割安になるとはいえ奇妙です。以下、私の推測です。先日スイスのシューズメーカーONの例で示したように、海外オーケストラのチケット代も関係者が日本では急激な円安となる前の水準を維持しようとしているのではないでしょうか。いろいろな補助金や協賛金で価格差の大半を埋めているのかもしれません。
当初ルツェルン音楽祭のチケットって高いなぁと思っていましたが、つらつら思うに奇妙なのは日本の方なのです。デフレと円安で円弱に陥った日本だけ見て「安い」と安心し、海外の現状に目を背けているとトンデモナイ目に遭うのは必定です。音楽会のチケット代に限らず、他の物価も同様です。そんなことをルツェルン音楽祭から帰ってきてからずっと考えてしまいます。

