WAGNER TABOO?
2025/11/07
ナチスによるオーストリア併合でザルツブルク音楽祭から追い出されたユダヤ系音楽家たちの受け皿として、1938年にルツェルン音楽祭が始まったことは以前に触れた通り。その最初の舞台となったのは、ルツェルンにあるワーグナー邸の前庭でした。今回音楽祭の合間にそこへ出かけてみると、「WAGNER TABOO? JEWISH PERSPECTIVES」が展示中でした。
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ワーグナー博物館はルツェルン中心部から南へ歩いて30分の湖畔にあります。ワーグナーが6年間住んだ家を博物館にしたもので、小高い丘からルツェルン湖を見渡す景色が素晴らしい処です。出かけてみると、ちょうど展示中だったのは「ユダヤ人の視点からみたワーグナー・タブー」というものでした。
ワーグナーがユダヤ人から忌避されるのは、ヒトラーがナチス国家の国威高揚にワーグナーの楽曲を利用したから(注記)。でも、もともとワーグナーがユダヤ人ぎらいの人物だったことが博物館の展示を今回見てよくわかりました。文学者、哲学者、音楽関係者、いろいろな人たちがワーグナーとユダヤ人との関係について記したものが展示されていましたが、とくにHate, hate, hateと連発するバーンスタインの言い分は強烈です。
そのワーグナー邸の前庭で1938年に最初のルツェルン音楽祭が行われたのは何故だったのか。軍事大国ドイツに睨まれたくない主催者側の思惑があったのかどうか、中心人物だったトスカニーニの思いはどうだったのでしょうか。
華やかなルツェルン音楽祭の一方でこんな展示がなされていることに気づく人は多くなかったかもしれません。でもスイス人の精神というか気っ風というか、そんなものをワーグナー博物館で感じた次第です。
今年は反ユダヤ主義(Anti-setimism)という言葉をよく聞きました。でも何でもかんでも反ユダヤ主義といってよいのか。
ハマスの暴挙に対抗して始めたとはいえ、パレスチナに対し徹底的な殲滅行為を繰り返すイスラエル。倍返しどころか、十倍返し、百倍返しの殲滅行為です。でも、そのイスラエルを少しでも批判しようとすると、イスラエルやユダヤ系勢力は「反ユダヤ主義」のレッテルを貼って攻撃します。米国の大学や映画界、演劇界などの例については報道もされていますが、あまりも酷い。ユダヤ人は絶対無謬だというのはあまりにも傲慢。ユダヤ人の国際信用力を自ら大きく毀損しています。
(注記)イスラエルではいまだにワーグナーの演奏が忌避されています。過去に何回かトライした指揮者や演奏家はいましたが、演奏会が物議を醸し暴力事件に発展することもあったそうな。つい数年前にはイスラエルのあるラジオ局で過去の経緯を知らない若いスタッフがワーグナーを流したためにラジオ局が謝罪に追い込まれたという一件もありました。
(追記)春のザルツブルク音楽祭から十数年間離れていたベルリンフィルが来年春から復帰すると関係者の間で大きな話題となっています。ペトレンコのベルリンフィルはワーグナーの「ニュルンベルクの指輪」4部作を来年春から毎年1つづつ公演することになっており、来年は「Das Rheingold」(第一幕)。でも、この時期にワーグナーかと思うのは私だけでしょうか。

