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フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年2月10日発売号つい先日、世界最大のソーラーパネル会社のサンテックパワー社の中核小会社が破綻しました。中国政府が救済するのではないかと噂されていましたが、最後は転換社債の不渡りで、あっさり破産。3.11以降、日本でもサンテック製パネルが大手量販店経由でかなり採用されていたようですから、基幹事業の先行きが心配です。

先日来、このサイトでもソーラー会社が破綻したり撤退していることをお伝えしてきました。でも、最大手のサンテックまで転けてしまうのは異様です。でもこれが異様でないとすると、考えられることは1つ。世界のエネルギー転換が顕在化し始めたということ。

ということで、エネルギーをめぐるニュースを私なりに線で結んでみることにしましょう。

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サンテックパワーの破綻には少し驚きました。過剰生産と安売り攻勢が原因だ、というのがアナリストらの言い分ですが、中国の国策企業ですから最後は政府支援で収まるのかな〜等と思っていたら、そうはなりませんでした。

先日お伝えしたように日本のソーラー業界も青息吐息。ドイツでは、ジーメンスが10数年前にソーラー関連事業を手放し、企業資源をガス発電と風力発電に集中させてドイツの新エネルギー政策を担ってきたことは既に説明した通り。ソーラー発電こそ新エネルギー源だと考える向きには理解しにくい話でしょうが、これが現実的な解なのです。

それにしても、世界最大のソーラーパネル会社が破綻したのはなぜだろう。何か別の、大きな理由があるのではないか。報道ではいつも肝心なことが隠されてしまうので、断片のようなニュースをあれこれ組み合わせながら、私たちは世界で何が起きているのか読まねばなりません。

数日考えていて、私なりにある結論に辿り着きました。それは、ここ数ヶ月話題になってきた「シェールガス革命」の信憑性は大だ、ということ。

ギリシアやキプロス等、ユーロ圏の経済問題は山積しているのに、なぜ米国等の株価が上昇しているのか。日本の株価上昇は意味不明なアベノミクスが原因ではないのに、米国に引っ張られるように日本の景況感もどんどん上向きです。

株価は未来を先取りするとよく云われますが、株価が未来を知っているはずはありません。おそらくこれは、世の中の動きを決定する権力を持つ連中が動き始め出したこと、それをヘッジファンド等の取り巻きや周辺が気づき、お金に換えようとしているからだと考えます。とすると、昨今の株価上昇は何かの前触れで、次に起こることは米国が話題の中心になるような大きな出来事ではないのか。

そこで、昨年後半から報じられてきた話の中に何かヒントになるものはないのかと考えてみると、ありましたありました。「シェールガス革命」です。

数年前までシェール(頁岩)の中にあるオイルをエネルギー源として使うには、コストがかかり過ぎるので石油や天然ガスの代替になりにくいとされてきました。10年前の私の知識では「シェールガスなんて論外」という認識ですから、昨年辺りからシェールガスシェールガスなんて云われても、ホンマかいな〜状態。

今回気になってあれこれ読み込んでみると、5年前にシェールの水圧破砕法(水砕法)が広く使われるようになって採掘コストが著しく低下し、米国の天然ガス価格は2008年当時の4分の1になっているのです。こりゃ凄い! これなら世界は一変します。

最初に掲げた「FOREIGN AFFAIRS REPORT」2013 No,2によると、米国では石炭電力の6分の1は2020年までに稼働停止、既に車はガソリンから圧縮天然ガス車に変わりつつあり、中国に進出していた化学工業界は米国内に生産ラインを移しつつあるとのこと。そして、「米国の石油消費に占める輸入石油の比率は2013年には45%へと急激に低下する」(2005年で60%)と解説されていました。これはまさしく「革命」的なエネルギー転換です。

雑誌の版元は米国外交問題評議会(CFR)。米国中枢のシンクタンクがそこまでの見解を表面化できる程度まで、既に事態は動いている、ということなのでしょう。私の不勉強でした。状況は大きく変わっていたのです。

米国が海外の石油や天然ガスから自前のシェールガスに転換すると何が起きるのか。後日改めて整理したいと考えていますが、一番の変化は米国や日本などがエネルギー面で中東の石油国に大きく依存することはなくなり、米国の軍事プレゼンスにも根本的な変更をもたらすこと。

シェールガスの埋蔵量は石油の比ではないし採掘コストも安くなるので発電コストもかなり下がってきます。石炭火力どころか、原子力発電など必要なしという議論だって出てきます。

米国どころか、世界中の自動車産業も大きくガソリン車からガス車へ移行していくでしょうし、死にかけた米国の自動車メーカーが先手をとって復活するシナリオもあり得ます。また、石油化学がガス化学に変わるなら、そこにまた新しい企業群が生まれ、企業再編に繋がっていくことでしょう。

云うまでもなく、シェールガス革命は地政学的にも大きな転換を与えます。中東の石油利権は吹っ飛んでしまうでしょうし、ロシアも危うい。現在、ロシアは天然ガス権益を振りかざしてヨーロッパ諸国に食い込んでいますが、そのプレゼンスも一気に低下するからです。

ここまで考えてくると、世界最大のソーラーパネル会社を中国政府が救済しようとしなかった理由もだいたいわかってきます。中国政府の判断とは、時代が石油・天然ガスからシェールガスへ転換しはじめた、ソーラー発電に投資しても安価なガス発電には太刀打ちできない、それよりも何よりも中国も急いでエネルギー転換に乗り遅れないように技術開発を急がないと時代に乗り遅れる、今更ソーラー発電に大枚を注力することもあるまい・・・等というものではなかったのか。そう考えると、サンテック絡みの疑問は氷解します。

何はともあれ、時代は動き始めました。先日のサンテックパワー社の破綻のニュースからあれこれ考えてみた結果、シェールガス発電への動きは揺るぎないものになったのだなぁと私は確信します。新しいエネルギーに関する新たな利権争いはあるにしろ、このトレンドが脱原発への大きな材料になることを素直に歓迎したいですね。

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