キプロスはモデルケース?

.opinion

amal13キプロス問題を受けて世界の株価がドロップ。日本も例外ではありません。一時的な調整程度で済むのか、新たな危機の再来なのか、先のことは誰にもわかりません。
ところで、キプロスの破綻原因は何か。キプロスにある銀行預金の3分の1はロシア人のものだそうですが、なぜキプロスにお金を預けているのか。そもそもEU全体から見ればわずか0.2%程度の経済規模の国の困窮が、なにゆえ世界中に波及するのか。私なりに整理しておきます。

・・・

キプロス。地中海の東の端、トルコの南に浮かぶ小さな島国。2004年にEUに加盟。たいした産業がないせいか、税制優遇政策を採り(タックスヘイブン)、世界中からお金を集め国の財政を回してきました。キプロスはそのお金で高金利なギリシア国債を買っていたようで、2010年以降あらわになったギリシア問題で一気に暴落し、今回の破綻に繋がっていくことになりました。

そのギリシア国債、元本カットされ欧州安定基金債等に名前を変えてしまいました。国債所有者曰く、「当初のユーロ建て金額の16%」になっているそうです。恐ろしいな。国が保証しているから安心なんて思っていると、こんな目に遭うという良い例ともいえますわ、ホンマ。

ギリシア問題のあおりで破綻したキプロス、EUからの金融支援の条件として国が実施した施策の1つが銀行預金の没収・統制でした。

いったん閉鎖された銀行業務は3月28日に再開されましたが、小切手の換金禁止、1日の預金引き出し限度額を300 ユーロに制限。また、5000ユーロ以上の商取引はすべて中央銀行が精査したり、国外への現金持ち出しは1000ユーロに制限されているとのこと。完全ではないとはいえ、「預金封鎖」そのものです。

とくに大口預金に対しては、10万ユーロを上回る預金の37.5%相当は株式に転換され、22.5%には金利がつかず、残りの40%は金利がつくものの銀行収益が改善されない限り預金者に払い戻されることはないという、厳しいものとなっています(出典はロイター)。

シロボケって始めて見たような気がします。綺麗ですね〜。龍安寺にて 2013/3/30

シロボケって始めて見たような気がします。綺麗ですね〜。龍安寺にて 2013/3/30

そんな大口預金をしていた多くがロシア系で、その中味はロシアでの税金を逃れたい富裕層やマネーロンダリングを狙う連中のお金でしょう。ロシアにお金を預けていたら、デフォルトで没収される危険性が付きまとうため、より安全な場所に移していたわけでしょうが、その結果が今回の事件。彼らのキプロス預金も吹っ飛んでしまいました。ブラックマネーも当然含まれているでしょうから、預金封鎖に動いたキプロス政府幹部やEU関係者の身の危険もありそうです。

それだけではありません。キプロス問題をより広範囲にそして深刻化させるニュースが飛び出しました。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の新議長ダイセルブルームさん(オランダ蔵相)が3月25日に行った爆弾発言がそれ。曰く、

 「今回の銀行破綻処理が今後の欧州のモデルケースとなる」

これでキプロス問題は一挙に、ユーロ圏に住む人たちにとって身近で影響の大きな話題に変貌することになりました。
だって、財政不安なスペイン、イタリア、その他大勢のEU諸国の人々にとって明日は我が身です。預金封鎖や大口預金の大幅没収なんてのが他国でも実施されるようなら、誰も銀行にお金を預けようとは思いませんからね。
追っ付け30日、ドイツのショイブレ財務相は「キプロスの救済は特別なケースでユーロ圏の預金は安全」と火消しに走っていますが、どちらを信じたらいいのか。国家は民を利用するが最後は国体優先、これが歴史の教えるところ。私ならダイセルブルームさんの言い分に信憑性を感じます。

知らない人も多いでしょうが、日本でも過去に預金封鎖を行っています。前科のある日本で次の預金封鎖がないとは決して言い切れず、今回のキプロスは明日の日本の姿ではないか、そう心配する次第です(理由を説明するのは面倒なのでオミット)。

龍安寺 鐘容池にて 2013/03/30

龍安寺 鐘容池にて 2013/03/30