アレバの噂

.opinion 3.11

シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]カトリーヌ・ドヌーヴ主演の映画「シェルブールの雨傘」ってご存じですか? そのシェルブールはノルマンジーのコランタン半島にあります。メランコリックなイメージとは裏腹に、ここはまるで原発銀座でアレバの見本市みたいな処。
まず、ラ・アーグ核燃料再処理工場、その隣にはフランス国立放射性廃棄物機関アンドラにフランス電力公社のフラマンヴィル原発、そしてさらに現在建設中の次世代原子炉。日本でいうと、福井県西部と青森県の六ヶ所村がくっついたような異様な場所ですね。ここには、地元民なら誰でも知っている有名な噂話があるそうな…。

・・・

その噂とは、

再処理工場で重大な事故が起きたら、政府は工場のある岬と本土を来結ぶ湿地帯を爆破して、岬を本土から切り離して、放射廃棄物とともに海に浮かぶ無人島にしてしまう

というものです(出典はクーリエ・ジャポンの2012年6月号)。

雑誌ではSFのような噂話だと軽く流していますが、私風にいえば、アレバ版「十兵衛の右目」で「裕次郎の斧」ですな。聞いた瞬間、十分あり得る計画だと考えました。原発事故に関し、フランスの人たちはそれくらい深刻に考えているし、政治家の冷酷さについてはきわめてドライだと喝破しているのではないでしょうか。

蛇足ながら、コランタン半島西部海上にはかの有名なオフショア金融拠点のガーンジー島とかジャージー島とかありますが、これはイギリス領?。そんなとこ知らんゾでフランスはいきそう(スイスとは違うという意味です)。

アレバという会社の名前は東電福一原発事故でも華々しく登場しましたが、知る人ぞ知る、きわめて政治的なフランス国策企業で核兵器産業の総本山。ちなみに、311当時のCEOアンヌさんは事故対応で目立ったのが気に入らなかったせいか、サルコジに首を切られてしまいました。そのサルコジの命運もあとわずか?。世の中ってわからんもんですわ。

本題に戻ります。

先の噂話の真偽はどうあれ、そんな物騒な話が噂でも出てくる処にフランスという国の国民性というか、凄さというか、そんなものがあるような気がしてなりません。だって、この噂話は原発事故についての関心の度合いの強さ、あるいは深刻さの理解度、そして警戒心の証しです。

日本の福島でそんな類の噂はありましたか?福井県西部でそんな話はありますか? 静岡県浜岡ではどうでしょう?

日本では原発は安全、事故なんか起こるわけがない、もし事故が起きても放射能被害はない・あっても軽微で問題にならない(福島で枝野某や山下某などが喧伝したことを思い出して下さい)、・・・・・、

311後でも事故は起きないと思いたい人が大勢います。起きて欲しくないという期待や希望はわかりますが、祈りだけでは未来は変えられませんし、放射能も消えません。

国や電力会社がウソやゴマカシで国民を洗脳してきた日本。そこにはアレバにまつわる噂話なんて必要もなかったということなのでしょうか。

アレバの噂話を知った今、フランス政府なら福島切り離しをどう考えるのか、福井県大飯原発であれば大島半島を切り離すのかどうか、玄海原発ならどうなのか、(一見残酷に思えるかもしれませんが、原発がある以上)そんなことを思考実験として検討する価値があるではないかと思った次第。

でも、そんな議論より「原発やめよう」の方がずっとスッキリするなぁ、やっぱり。