他山の石

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NZの地震で生き埋めになったとされている人たちが1人でも救出されることを願っています。この機会なので地震と水の話を少し。

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水道管は地面の中を通り、建物の中をめぐって蛇口に辿り着きます。地震で地面がはげしく揺れたり、建物が壊れたら、水道管はずれたり亀裂が入ったり、ひどい場合は壊れてしまうでしょう。誰にでもわかる話。これがわからないのが日本の水道関係者だと云ったら言い過ぎでしょうか? 

だって、彼らが持ち出すのはいつも「地震に強い配管を作ろう」みたいな話ばかり。耐震菅とか耐震継ぎ手を持ち出せば、大震災の時でも大丈夫だと考えているのでしょうか。断層近くにある水道管が地盤のズレに追随できますか? 大きくズレたら無理でしょう。継ぎ手の想定変位内に揺れが収まってくれるでしょうか?これも無理ですね。それでも大丈夫だと気持ちはわかりますけど、そうは問屋が卸さない。そんなこと、過去何度も事実が証明してじゃないですか。

10年前に土木学会誌に投稿した「あぶない水道水 袋小路の水道パラダイム」に私はこう書きました。

『管路による供給』しかない現在の水道のサービスでは、管路が破壊されると当然ながら水は送れない。こんな単純な理屈がわからないのが日本の水道で、今な お管路を補強し、地震に強い水道を目指すことで次の艱難を排除しようと考えているようだ。これもまたパラダイムの危機的末期的症状である。

10年の歳月を経て、どれくら進歩したんでしょうか? 
実際のところ、先の投稿にもあるように想定範囲に地震が収まってほしいと期待をする水道サービスには頼っていられない。そういう思いで病院や企業が独自に地下水利用に走るのは当然といえば当然。当局がそれを非難する前にすることはあるだろうっていいたいですね。

拙著の中でチューリッヒの例とカリフォルニアの例を引きました。チューリッヒでは配管を2重化。メイン給配水の鋳鉄管とは別に、異なる水源からポリエチレン管で給配水する仕組みになっています(写真)。見た時ビックリしましたが、これは非常時対策。地震だけでなく戦争みたいなものまで想定しているのでしょう。同じものを見たことがある日本の水道関係者はそれなりに多いはずですけど、水と安全はタダなんて脳天気なことを日頃から嘯いている国民性からは全く理解できない施設かもしれません。

阪神大震災の後、US雑誌の「ナショナル・ジオグラフィック」に載った記事によると、日本では地震の予想とか予報に巨額なお金を費やしている。そんな国は他に中国くらいだ。さすがに占いの国ですな……、とのこと(概意)。予想できない地震をあれこれ研究するより、起きた時にどうするかを研究する方が良いというのが欧米流らしく、日本の考え方が全く理解できないという趣旨でした。私はこの指摘に同意します。

これまた拙著「あぶない水道水」で引用しましたが、かの物理学者 寺田寅彦さんは「地震は天災、震災は人災」と述べ、災害は人の対応で軽減できると指摘しました。予想とか予報とかに明け暮れる地震学者はこの言葉を意味を吟味してほしいものです。起きたらどうするかという実証研究や制度整備にもっと国や研究者は尽力すべきです。でも、そうではない現状が続く限り、国や自治体などはアテにせず自分で自分の身を守る方策を探すのがベターでしょう。

蛇足ながら、水道被害よりも遙かにコワイのは原子力発電所の震災被害。よくもまぁこの国が今まで無事なのが不思議なくらい。そう思っている人はきわめて少ないでしょうけど。こちらは起きたら破滅ですね。