井戸水ビジネスが水道事業を一層圧迫

.EcoStyle

写真は5年前の雑誌「ダ・カーポ」の表紙。タイトルは先の水道使用料減で料金アップに対するコメントの後で書いた記事の中の小見出し。トイレの水洗水量が大幅に減るともに、記事の後半で水道水を井戸水に切り替えようという動きが全国で進んでいることを紹介したものでした。

・・・・・・

NZの地震のニュースを聞きながら、日本でもまた大地震が起きたらどうなるのかなぁと考えた人は多いはず。NZでも水が止まっているので困っているという話が出てきました。水の件で結論を云っとくと、日本でも水道サービスには頼れません。自分で2,3日分くらいの水は用意しておくのが身のためです(きっぱり)。

なぜか? 日本の水道サービスがほとんど役立たずだったことは阪神大震災で立証済み。当時の厚生省担当課長は非常時の水は別だと正直に吐露していましたが(拙著「あぶない水道水」参照)、あれから16年経った今でもほとんど改善の方向が見えません。現行のパラダイムの下では地震時に水道サービスを期待するほうが無理というものでしょうが、ないものねだりの勝手な期待は身を滅ぼします。

でも、日々大量の水がないと成り立たない病院や企業そして消防はどうしたらいいのか。批判するだけではやっていけません。そこで、活路を地下水の独自利用に求めました。これは正解。だって、技術的に可能だし、実効性も高く、そして何より確実だから。この話は既に15年前に拙著で指摘した通り。技術的な説明等々については実績のあるウェルシーのHPでもご覧下さい。

ダカーポ 582号 (2006/5/3)

先日インターネットを徘徊していたら、「地下水人気、自治体困った 病院やホテル、次々乗り換え」(朝日新聞011年1月23日)という記事がありました。災害対策などで地下水をくみ上げて使う企業等が増えているので水道水の売上に繋がらない、だから水道サービスを担う自治体は困ってしまうという話です。
これがまさに上に記した状況の今を説明しています。

朝日新聞では神戸大医学部付属病院やホテルオークラ神戸の例をあげながら、経済性や災害時の対応で地下水利用が進んでいることを示し、日本水道協会のアンケート結果を紹介しています。それによると、「03年度以降に地下水に切り替えた大口利用者(回答676施設)の内訳は、病院(33.3%)、販売業(15.4%)、ホテル・旅館(15.1%)の順に多かった」とのこと。その結果、大阪市では「約7億円の減収」、「神戸市でも09年度までに少なくとも20施設が導入し、年間約4億5千万円の減収」と水道当局に大打撃を与えています。まぁ配管などの耐震化だけを震災対策と勘違いしてしまった末路ですね。

現行の水道パラダイムに居座る限り、日本の水道の未来は暗いな、やっぱり。

(為念)みんなが好き勝手に地下水利用を図ると地盤沈下などを引き起こしますし、地下水の水質を考慮するなら保全対策も併せて実施しないとアカンというのはあります。でも、それ以上に問題なのが現行の水道サービスが非常時には役に立たないということ。受給者がこれらをハカリにかけて、やっぱり地下水を選択してしまうのを水道当局が責めるのは筋違い。