長期 分散 積立 の前提条件

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昨晩から米国ほか世界の株価が大きくドロップ。米国の短期金利上昇はもうそろお終いだとか日本の株価はそろそろ上昇する等という話が砕かれた感ありですが、株式投資にお金を注ぎ込んだ人の心胆寒からしめていることでしょう。でも、明日のことは誰にもわからないし、浮かれるのは禁忌だし、逆にネガティブに考えても話は始まりません。

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まず、株式のグラフを1つ。これはある銘柄の1987年末から現在までの変動を表しています。この35年に6倍〜7倍になっています。もし100万円最初に投資していたら今600万円以上、複利でみると6%弱といったところでしょうか。

まず、2000年にピークがあり、その後4割程度下落。次に2007年末にピークがありますが、2008年から2009年にかけて急激に半分以下に下落しています。その後、小さなアップダウンを繰り返し、最近では2020年3月に3割近く下落し、さらに、ここ1年の下落は未だ道途上で、まだまだ落ちそうな雰囲気です。

さて、質問。この株は何か。この株のようにときどき三割四割、いや場合によっては半値以下になるような株を、あなたが株主ならずっとキープできるでしょうか。

(・・・・・考える時間をどうぞ・・・・・)

まず、この株とはACWI。正式名は  iShares MSCI ACWI ETF。モルガンスタンレーが組成した全世界の株式で構成される株価指数です。株というよりも株式の指標(インデックス)というべきところでした。(出典はMSCIデータ Copyright MSCI Inc.)

これらドローダウンはそれぞれ、ITバブルの崩壊、リーマンショック、新型コロナ禍以降を指しています。ちなみに、このグラフの直前で起きた1987年11月ブラックマンディの下落23%は含まれていません。

日本ではMUFGがこれをベンチマークにして「eMAXIS Slim 全世界株式」という名前で商品化し、日本でも人気になっています。でも、為替も視野に入れるならドル建ての本家ACWIがお薦め。

最近FIRE(Financial Independence Retire Early; 財政独立で早期引退)と云って、長期 分散 積立投資を囃す動きがありますが、先のACWIの動きをみてホンマに「長期 分散 積立」できるでしょうか。

まず、長期とはいったい何年なのか。過去例でいうと、いったんピークを打った後大きくドロップした株価が戻るには3年から7年はかかっていますから、きちんと利益を出そうとするなら10年〜20年以上は持ち続ける必要があります。ちなみに1929年の大恐慌なら40年近く元値に戻りませんでした。

次に分散という面でACWIをみれば、世界中の株式に資金を分散されていますので、この条件はクリア。

また積立という面でみれば、下落期間でも黙って安値で買い続ければ買値平均値を下げられますからウエルカム。でも先の見通しがつかない状態で2~3年以上下落が続けば粛々と買い続けるのはイヤになってしまいます。そして、何よりも大きな前提条件はこの先株価がアップダウンしながらでも騰がり続けていく、という楽観的な予測です。

もう一度質問。こんなアップダウンのあるものをずっと買い続けていけますか? 私にはかなり難しい。1年はオッケイでも3年5年も下落が続き、資産が3割減半減になってしまうと心底イヤになってしまいます。これを乗り切るには買ったことを忘れるか、あるいは強靱なメンタルがいります。

つまり、建前の「長期 分散 積立」は正攻法ですが、実際に実行できるかどうかはあなた次第というわけ。とくに時間を味方につけたいなら、若さは基本条件です。

かくいう私はどうしているか。昨年来の株価は騰がりすぎと判断し、ACWIについては既に半分ほど売却し、ドルのままキープ。ピークから2割3割落ちてきたら少しづつ買い戻していく予定です。というのも、過去例でもわかるように価が大きくドロップし歪んだ時の買いは有効だから(でも未来は誰にも不明)。

残念ながら今は非日常(Extremistan)。コロナ禍はそろそろ終息しそうですが、ウクライナ戦争はまだ先が見えませんし、台中問題も雲行き怪し。明日は今日の続きという、月並みな国(Mediocristan)の日常的な論理ではこっぴどく痛めつけられます。

株もいっしょ。リーマンショックに例を引くまでもなく、こういう時期は日々のアップダウンが大きくなるのでどうしても期待感に引き摺られてしまいがち。上昇相場かそうでないのかを知りたいなら、一ヶ月、三ヶ月、一年の高値をブレイクアウトするかどうかをチェックしましょう。そういう意味で云えば、まだまだ下降相場(きっぱり)。ご注意!