カニ 2021

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今年もずわい蟹のシーズンが到来し、既に一ヶ月。今年は水揚げが少ないため価格が高騰中、小売末端で昨年の2倍3倍になってしまい困惑しています。そのカニ、心から美味しいと思ったのに巡り会ったのが2005年、それからは毎年のように食してきましたが、特別美味しいのあり、普通に美味しい、あるいはちょっと劣るなぁというもの等いろいろ。その違いはいったいどこにあるのか、少し考えてみました。

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私は九州で育ったせいか、ずわい蟹といえばカニ缶でした。それも値段が高く、お歳暮などの豪華品。こどもの頃は姿形のわかる大きな茹でカニはまず見ることもありませんでした。

甲羅の蟹蛭が成長の印(2021年12月4日@波華楼)

そのズワイ蟹が一般家庭にも登場するようになったのは1970年代以降。本によると、1972年に大阪にお店を出した「かに道楽」が発端です。最初は山陰などのカニを都会でも食べることができるようにしたいという試みだったのでが、人気が出て数が足りなくなり、現在「かに道楽」等ではロシア産が一般的とのこと。

私が料理屋さんや旅館で食したのが1980年代半ば頃からで、立派なものを他人様から頂戴したこともありましたが、蟹ってこんなものかぁ〜程度の感想でした。というのも、こちら蟹や海老を食べると口内に蕁麻疹ができるほどのアレルギー持ちだったから。

カニ三昧(2010/12)より

それがモノ知らずだったのを痛感したのは2005年。お寿司屋さんで香箱を食べる機会があり、それが世の中にこんなものがあるのか!という位にとっても美味だったのです。香箱とは雌のズワイの金沢での呼び名で、地方によってはセイコやコッペ、コガニ、メガニ等といろいろです。

聞けば、客に出すその日に水〆した活き蟹を茹でてから丁寧にばらすとのことで鮮度抜群。まず身の旨味が素晴らしい。そして赤い内子(卵巣?)の甘みもこの上なし。明らかになったのは私の蟹アレルギーが蟹そのものによるものではなく、鮮度落ちでできた雑味成分によるものみたい。鮮度の悪いものでは今でも口内が痒くなることがあったので多分間違いないでしょう(私に食べさせれば新鮮かどうかわかる?!)。

さて、カニの美味しさを知ってからというもの、毎年シーズンになると金沢の乙女寿司や山代温泉のあらや滔々庵などでカニ料理を注文するようになりました。2005年から数えると今年で17回目。でも、毎年同じ味わいかと問われると???。美味しい年もあったし、それほどでもない時もありました。その違いはいったいどこなのか。17年間の経験をざっと振り返ると・・・、

まずそれほどでもなかったのは2月末から3月のカニ。おそらく禁漁前になってくると水揚げが減り、水槽で寝かしたものが混じってくるため身が痩せて味わいが落ちてくるからではないでしょうか。正月明けのカニがもう1つなのも同じ理由で、年末年始に漁がなく水槽ガニを使うことが多いからでしょう。

次に場所の違い。関西では兵庫県の津居山港などのカニが好まれますが、こちらがよく食べるのは福井や石川産。藻場や海流で餌が違うので味も違ってくると聞いても、同時に食べ比べをしていないので違いは不明。それよりも年による寒暖の違いの方に影響があるのではないかと思っているところです。

焼いた蟹味噌で蟹身をしゃぶしゃぶ、とっても美味(2021年12月4日)

一方、美味しかった時の記録を辿ると、ハシリの蟹はまず間違いなし(ハシリとは漁最初の頃)。そういう時期に、仕入れに拘りのある所や浜から直接仕入れている旅館では美味しいカニを楽しめました。捌きの手際よさや調理の巧みさという要因もあるでしょうが、水揚げからテーブルまで時間の短さが一番の要因ではないでしょうか。

要するに、カニは鮮度。新鮮なものをどうやって入手しているのかが問題であって、高いから高級旅館だからオッケイという単純ななものではなさそうです(私見です、念のため)。

さてさて、そういうカニの美味しいのに当たれば良いのですが、当たらなかった人にとってはカニは高いだけで印象も薄くなります。人によってカニの美味しさについての感想が違ってくるのは、そういう当たり外れに関係しているのかも。繰り返しますが、イイ蟹に当たるとこの上なく口福です(きっぱり)。

今年も香箱は自宅で。スリコギなどで身をほじくり出すのは慣れたもの? with オリビエ・ルフレーブのムルソー。(2021年12月14日)

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今年は家で香箱 2 (2019/11/20)
カニという道楽 (2019/11/11)
今年は家で香箱 (2019/11/10)
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