圧巻の内田光子さん

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今年は出かけた演奏会はほとんどアタリ。皆コロナ禍の中で地道に力をためてきた成果を一気に出したのでしょうか。その中でも11月7日の内田光子ピアノ・指揮withマーラー・チェンバー・オーケストラは今年一番でした。

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内田光子さんってピアニストをご存じですか。かく言う私も彼女の生演奏を聴くのは今回が初めて。内田さんの経歴を簡単に記すと、親の仕事で12歳から渡欧。ピアノはオーストリアで学び、23歳で英国デビュー。70年代は集客もう1つだったのが80年代に評価が高まり、国際的な名声を獲得、現在に至っています。

特筆すべきはピアノを弾きながら楽団の指揮もするというスタイル。レコードやCDのジャケットでご存知の方もいるでしょうが、まずピアノの向きが違うし、指揮しながらの演奏でオケとのかけ合いというか、ピアノと弦楽器、吹奏楽器他とのやり取りが従来のお立ち台からの指揮とは異なる臨場感を盛りたてます。初めて見たけど、緊張感が持続して面白い!

当日の演目はモーツァルトのピアノ協奏曲2つに現代音楽のヴィトマン(後者は内田さん抜き)。そういえば、モーツァルトもピアノを弾きながら楽団の指揮をしていたらしく、内田さんはその再現を狙っているのか。そんなことを考えていると、内田さんとモーツァルトが重なってくるから、あな不思議。そういうことを感じさせるビビッドな掛け合いがステージ上で展開しました。CDやレコードではこの雰囲気は掴みにくいかもしれません。

これは面白い!あっという間の2時間で圧巻のライヴにアンコールも2つ入って充実の晩となりました。こんな演奏会に出会ったのは初めてでとっても幸せな気分。

世はグローバル。そして情報は世界中を走り抜けていきます。先の田中彩子さんもそうですが、国際的な名声を勝ち得るには音楽演奏家ならずとも日本に拘らず、世界に飛び出していく意気込みが求められる時代かもしれません。内田さんや田中さんを聴いていてそう感じた次第です。