チック・コリアを歌う田中彩子さん

music

先月所用で和歌山へ。その帰りに大阪のいずみホールで田中彩子さんのリサイタルへ。昨年に続き2回目のコロラトゥーラでしたが、現代曲を織り交ぜた選曲とその歌いぶりに大感激。

・・・

田中彩子さんといえば超高音域コロラトゥーラ・ソプラノの歌い手。歌手になるため18歳で舞鶴からウィーンへ留学し、現在もウィーン在住のため、日本語が変になっていることは前回紹介した通り。今回もたどたどしい日本語が会場の暖かな笑いを誘っていましたが、地声がソプラノ声とは違って赤ちゃん声なのが尚更興味深いところです。

さて肝心の当日のリサイタル、前半がクラシック、後半は現代の曲採用という内容でした。他のコンサートではときどき途中で集中力が途切れることもあるのですが、田中さんの歌ではそれがありません。むしろ、1年振りのコロラトゥーラに新鮮味を感じるくらいです。

コンサートやリサイタルに出かける場合、当日新鮮な気持ちで曲を聴くために演奏曲の事前チェックをしませんので、後半登場した曲には予想外の驚きと感動を覚えてしまいました。

その曲とはチック・コリアの Return to Forever。ジャズといえば当時はマイルス・デイビスやコルトレーン華やかなりし頃、さわやかな、かつ印象的なメロディで不思議な感じ。クロスオーバー、そしてフュージョンと名付けられるジャンルの先駆となった画期的アルバムでした。

田中さんは1972年に発表された名盤中の名盤の中から、Crystal Silence と What Game Shall We Play Today の2曲を取り上げていました。聴けばあの曲かとわかる人も多いのではないでしょうか(齢60歳以上?)。

これらは既に50年以上前の曲ですし、田中さんにとっては生まれる10数年前のこと。でも、古さが全くないのは元曲の革新性でしょうか。

もともと What Game Shall We Play Today には女性ボーカルが入っているのが気になっていたのですが、田中さんの歌いっぷりは素晴らしい。田中さん自身のアルバムにも入っているので御本人も納得のデキなのでしょう。チック・コリアさんが生きていたら是非聴かせたいところです(2021年逝去)。

改めて田中版のチック・コリアを聴きながら、彼女がなぜこの曲を選んだのか、それが気になって仕方ありません。とにかくイイもの聴きました。大満足。

聞けば、田中さんは来年が日本デヴュー10周年(海外デヴューは18周年?)。いずみホールが日本での出発点だったらしい。18歳で日本を飛び出したため(日本の音大は出ていない)、いくらヨーロッパで名を上げても日本での集客はなかなか大変なようですが、歌のリサイタルなんて昔は出かけようとも思わなかった私が感激するくらいにとっても素晴らしい!また来年も聴きに行こうと思っている次第です。


世界では有名なのに日本での集客がままならないといえば、ピアニストの内田光子さんも昔はそうだったらしい。その内田さんのコンサートには11月7日(兵庫県立芸術文化センター、ほぼ満席)に出かけましたが、これが今年一番かと思わせるほど素晴らしい、私にとっては大アタリのコンサートでした(次で紹介)。

蛇足)Return to Forever のベースはスタンリー・クラーク。その後チョッパー奏法で名を馳せることになるプレーヤーですが、よく聴きましたね〜私。アルバムも数枚持っています。私のジャズアルバム歴はここらからスタートし、ボブ・ジェームズ、アル・ディメオラ、アル・クルー・・・と来て、ジム・ホール、ビル・エバンスに原点回帰しつつチャーリー・ヘイドン等々に繋がっていきました。ここ数年は北欧系のが好みです。