株価が教える薬の評価

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テレビや新聞でアビガンの話が喧伝されています。某タレントや女性アナウンサーあるいはプロ野球の選手が使って治ったという話が出てくると何か素晴らしい薬のような気がしてくるのは人情でしょう。でも、アビガンの効果はまだ疑問符つき。なぜなら、ランダム化比較試験を行っていないから(現在進行中)。一方で、ギリアドのレムデシビルが米国FDAの認可を受けたのはランダム化比較試験で効果ありとされたから。この差は歴然。どちらも危険な副作用があるので要注意ですが、この手の医薬品の効能についての判断は実は株価を見ていればだいたいわかります。今回はその話。

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既に記したように、COVID-19に対する治療薬剤としていろんなものが登場しています。でもどれが有効なのか、なかなかわかりにくい。医学知識が有る者ならある程度判断できるかもしれませんが、新聞テレビはスポンサーなどの影響もあって本当に正確な情報を提供しているとは思えません。

アビガンがそうです。これは富士フィルムの富山化学工場が製造する純国産の医薬品なので、日本では数多くのニュースが流されています。でも、世界を見渡すとそうでもなし。というのも、ランダム化比較試験はいまだ進行中で結論が出ていない(6月末終了の予定)。結論が出るまでは、薬を飲んだから治ったのか、飲まなくても治ったのかが不明です。副作用があるので使うのも難しい。

一方のレムデシビル(ギリアド)は1月から治験を開始し、ランダム化比較試験もこなしたため、先日米国FDAの緊急認可が下りました。日本でも認定予定という報道が流れたのを見た人も多いでしょう。これも危険な副作用ありですから、使う時には要注意。

難しい話はさておき、この2社の株価を見てみましょう。というのは、この手の情報というのは関係者(インサイダー)が発信源となり、その周囲にいる者が世間に流し(一次提供者)、株式市場が気づけば株価が騰がり、メディアを通して一般に伝わるという経路を経ますから、株価を見ればだいたいの評価がわかるのです。

まず、アビガンの富士フィルム。世間で話題になってから株価が騰がり、昨年末の5500円を超えてきました。でも、4月6日の6420円がピークで、その後はダラダラ下がってきています。もしアビガンが有効で世界中で使われる見込みなら、こんな動きにはならないでしょう。お金に聡い相場師が、アビガン人気に集まった素人をカモにして逃げたという感じでしょうか。

もう一方のギリアドはどうでしょうか。こちらはアップダウンが激しく落ち着きませんが、それでも右肩上がりのトレンドになっています。これは世間の期待が高く、株価は今後も騰がると判断されているからでしょう。でも何かニュースが出ると1日で10%前後のアップダウンがあるので、メンタルが強くなければついていけません。

上記の通り、医学的知識がなくても株価を追っていれば効能効果の評価はだいたい見えてきます。今後アビガンがランダム化比較試験で有効との結果が出てくれば、富士フィルムの株価は一気に騰がるでしょう。でも、もっと安全な薬剤が表舞台に出てくれば、話はまた変わってきます。思わぬところから現れた希望の光が大村智博士(北里大学、ノーベル賞)のイベルメクチン。私はレムデシビルなどよりも、副作用のほとんどないイベルメクチンの治療効果に期待しています。イベルメクチンのランダム化比較試験で良い結果が出ると必ずやブレークします(期待込み)。

(蛇足)ちなみに私は製薬企業の株は買いません。20年ほど前、アルツハイマー病の特効薬開発で世界の先頭を走っていたエラン(アイルランド)の株を持っていましたが、治験で死亡者が出たというニュースで一晩で10分の1(不正確)。治験結果は恐ろしい(涙)。その後、製薬企業の株には手を出さないことにしました。ギリアドなどで一儲けしようという皆さんはご用心。