ポスト・コロナ? その1

health/sickness medical

米国の感染者が約60万人となり、死亡者も2万人以上とダントツなのに、死亡者の伸びが減ってきたという理由で経済再開の話がちらほら。一方で、中国のウーハン(武漢)では都市封鎖が解除され、イタリアやスペインでもそろそろポスト・コロナの話題が出てきた今日この頃。でも、まだ決定打のワクチンはありません。じゃ、各国の強気の根拠はどこにあるのか。特効薬の現状と抗体検査およびその応用治療について整理してみます。

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まず特効薬。COVID-19に対抗するため、世界中でビタミンCから漢方薬までありとあらゆる薬物試験が実施されてきました。その中から有望なものとしていくつか話題になっています。以下、MIT Tech review「現時点でCOVID-19にもっとも有効な治療薬はどれか?」アントニオ・レガラード)をベースにし、内外のニュースや製薬会社サイトを参考にしていますが、こちら薬学医学は専門ではないので素人の印象レベルの話だとご理解下されば幸いです。

ヒドロキシクロロキン

スイスの製薬企業ノバルティスのジェネリック部門のサンド製(追記)。トランプ大統領がなぜかしら御執心の抗マラリア薬。ニューヨークでは臨床試験が始まるとのことですが、副作用が無視できず、たとえばフランス国家医薬品安全庁(ANSM)の調査でも問題にされています。おまけに、この薬剤試験を行ったクリニックの試験にはプラセボ対照群がなかったことでも批判を浴びています。

加えて、製造元のインドでは4月4日、ヒドロキシクロロキンとその製剤の輸出を「一切の例外なく」即時禁止すると発表し、米国の動きを牽制しています。

(追記)サンドと聞くと私は、1986年の火災で大規模なライン川水質汚染を引き起こした事件を思い出します。

ファビピラビル(アビガン)

2つ目は中国で効果があったと報じられた、日本の富士フィルム製造のインフルエンザ治療用の薬剤。チェックしてみると、いっしょに試験したロシアの同等品よりも「好ましい」程度で、効果についてはもう1つ不明なようです。あまたある特効薬候補の1つというのは事実ですが、各国のニュースを見る限り日本ほど取り上げる国は見かけません。

ロピナビルとリトナビル

抗HIV用の薬剤で最大規模の研究が行われていますが、治療効果は発見されませんでした。ただ、米国では配合剤が「それほど重くない患者に効果があるかもしれない」と考えている、らしい。これもフランスでは「厳密な医療上の監視下で医療機関でのみ使用されるべきだ」と強調されています。

レムデシビル

米国のバイオ企業ギリアド・サイエンシズ製造。当初はエボラやマールブルグ熱の治療薬として開発されましたが、SARSやMERSに対しても有効性があるということで、今回のSARS-2にも使えるのではないかと考えられています。先月23日、日本でも国立国際医療研究センターが「医師主導臨床試験を開始する」と発表

・・・と昨日この原稿を書いていたら、4月10日付でニューイングランドメディカルジャーナル誌に治験報告が出ていました〔報道はこちらこちら)。曰く、

18日間で患者の68%は症状が改善(53人中36人)。
人工呼吸器を装着した者の57%(30人中17人)は機器を外すことができた等々

と素晴らしい成績をあげています。この結果を受け、FDA(米国医薬品局)は最短で承認する模様みたい。この薬剤が当面の一番星かもしれません。

他にも日本ではカレトラ(HIV)、オルベスコ(喘息薬)、フサン(急性膵炎)などが話題になっていますが、カレトラには効果なし等というニュースを出ていました。

以上からもわかるように、これら薬剤はターゲットはマラリアだったりインフルエンザ、あるいはエボラ、HIV等々ですから、新型コロナウイルス(SARS-COV-2)はオフターゲット。企業の儲けが絡む話だからか、オフターゲットでも決して軽視しないという姿勢がここでは十分に発揮されていることに注目しておくべきでしょう。