市中感染に対応するためには検査が第一
2020/05/03
国内の大都市圏では市中感染が蔓延中。一部で行われた抗体検査でその事実が判明していますが、国や専門家会議はいまだに市中感染に対する有効な施策を打ち出せず、クラスター対応に拘り続け外出規制の延長で誤魔化そうとするのみ。市中感染への対策がないままでは、外出規制を解除した後に更なる感染拡大を招きそうです。かといって所得補償もないままで外出行動規制を延々と続けたら、経済活動の息が止められて社会が破綻してしまいます。いったいどうしたら良いのか、少し考えてみましょう。
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日本でも明らかになってきた市中感染。既に米国など海外での報告からPCR検査陽性数を遙かに上回る人数が既に感染していること(抗体検査で陽性)が明らかになっています。日本でも政府が公表する患者数(PCR検査陽性の感染者数)を大幅に上回る人数が既に感染したことが抗体検査で明らかになってきました(要するに、公表された患者数よりもずっと多くの人が実際は感染したということ)。
まず、慶應大学病院は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外で入院する患者さんの中にPCR陽性の人がいることを4月21日に報告し、「無症状で、新型コロナウイルス感染を疑っていなかった方々の中にPCR陽性者がいる」という事実を提示しています。以下の期間を合計すると、入院患者の約2.7%が陽性(感染)だったとのこと(5月1日に追加発表)。
また、大阪市立大学の研究グループによると、Mokobio Biotechnology社(メリーランド州、米国)と抗体価測定システムを共同開発し、「COVID-19以外の目的で外来受診した患者さんの残余血清を無作為抽出検査したところ、抗体陽性率はおよそ1%程度」でした。
さらに、神戸市立医療センター中央市民病院も新型コロナウイルスとは関係のない症状で4月7日までの8日間に同病院の外来を受診した患者1000人の血液を調べたところ、33人に過去に新型コロナウイルスに感染したことを示す抗体があった、「性別や年代の偏りを修正すると、抗体を持つ人の割合は2.7%だった」と発表しました。(5月2日)。
上記の、慶應大学・大阪市立大学・神戸市立医療センターの3つの調査では、それぞれの病院をCOVID-19以外の病気で受診した患者さんを対象しているので、当然のことながら世間一般を代表している訳ではありません。それでも、東京や大阪/神戸の大都市ではCOVID-19の感染者がかなりの数に上っていることが容易に推測されます。
控えめに1%と見積もって、5月初め時点で東京都だけで10万人、大阪/兵庫でも数万人が感染している/感染した、と考えられます。厚労省が発表しているPCR陽性者(5月2時点で東京都4478人、大阪府1641人、兵庫県645人)に対して、その10倍〜20倍以上の感染者が実際にはいると推定されます。
この数値は市中感染の広がりを示しており、クラスター対策では到底対応できない程度に感染が広がっている証拠。では今後どうしたらいいのでしょうか。
まず、抗体検査を全国的に広範囲に行い、COVID-19の日本での感染状況を明らかにすること。ただし、抗体検査だけでは感染初期を検出できないので、PCR検査の件数も10倍以上に増やすように検査態勢を大幅に見直すことが肝心です。
第二に、市中感染が蔓延している現在、大都市圏ではクラスター対策は意味をなさないので保健所などの業務を大幅に見直すこと。また、市中感染に対応できる実践的な感染症の専門家に政府が助言を受けることを強く期待します。いまだにクラスターに拘る「専門家会議」には退場してもらいましょう。
第三に、罹患時の死亡率が高いと報告されている人々、つまり基礎疾患のある人々や70才以上の人々の外出規制等を強化すること。医療機関への受診はなるべく電話診療を利用するという方法もあります。入院治療・ショートステイ・デイサービス・訪問サービスの利用などには感染の危険性があることを理解し、感染を覚悟して利用することも必要でしょう。
市中感染が蔓延してしまった現在。それでも感染状況を的確に把握し、重症化する可能性が高い高齢者の行動制限を徹底すれば、若年層の未感染者や無症状の既感染者の経済活動を制限する必要性は薄れます。感染状況を随時チェックしながら、飲食店や店舗の再開を段階的に行って施策の構築あるいはその道筋を明確にしないと、明日はないのではないでしょうか。