岩田健太郎の処方箋

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ベスト新書 2020年4月20日
岩田健太郎 新型コロナウイルスの真実

岩田健太郎さんといえば、例のダイヤモンド・プリンセス号の感染対策がきちんと出来ていないと指摘したことで、乗船2時間後に下船を命じられてしまった医師です。その直後、ご自分の考えを動画にまとめ、日本語と英語でアップして注目を集めたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。その岩田氏が出版したのが、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書 2020年4月20日)。感染症対策とは如何にあるべきかについていろいろ勉強になること多々。

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新型コロナウイルスによる感染禍(COVID-19)、その災禍に対していったいどこまで私たちは理解しているのでしょうか。少なくとも行動規制が5月6日で解けるなどという期待は既に不可能といってもいいでしょう。今一番大切なのは「情報」です。岩田健太郎氏は本の最初でそう提示しています。

現在の日本の厚労省やその取り巻きの専門家会議は「作戦第一、情報第二」の旧陸軍からの伝統を踏襲しているようで、時々刻々と変化する感染症の実態に対処できていません(岩田本にも同様の指摘あり)。

岩田氏の処方箋をひと言でいえば、相手が正体不明なウイルスなんだから状況や情報に応じて対応を変えていくべきだ、ということ。おそらくそれが一番の対処方法ではないでしょうか。本で展開されている、感染の出発点からクルーズ船対応、そしてクラスター潰しに至るまでの経緯についての岩田氏の論評は基本のキからいろいろ教えられる点が多々あります。

この本自体は2時間くらいで読めます。でも、深く理解するにはもっと時間がかかるでしょう。また、専門用語をあまり使っておらず、内容が分かりやすかったので文章力があるなぁと思っていたら、岩田氏の話を鈴木康成氏(編集者)と甲斐荘周氏(ライター)が聴き取りで著したと後書きで知りました。


マスクの件についてひと言。岩田氏はマスクは感染防止にはほとんど役に立たないのでつけないとのこと。でも、マスクの装着については岩田本の執筆時と今では状況が変わってきたのではないでしょうか。

というのも、私もあなたも無症状の感染者かもしれないし、「発症の0.7日前にウイルス量が最大になると考えられ、発症時点以降はどんどんウイルス量が減る」という論文も出てきました。また、咳やくしゃみの出始めの1回目・2回目は本人でさえ症状を自覚していないことがあります(自分が病気とは思いたくない心理)。このため、無症状の人もマスクをする方が現時点では良いのではないかと思われます。そして、岩田氏の指摘通り、感染を広げないためには手洗い厳守。また、少しでも症状ありと思ったら自宅で過ごすことが大切です。

最後に。この本の執筆時点は3月中旬ですが、紹介されている感染状況や知見はその後大きく変化しました。岩田氏も云っている通り、情報が変われば対処方法も変わるため、本の内容を金科玉条とせず、現時点での情報を読者自身が集めて「自分で考える」ことが期待されています。その点お忘れなきように。