感染者数の国際比較ができない 日本

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先日来紹介してきた、COVID-19にBCG接種が有効かどうかという話の前提が、各国の感染者数や死亡者数のデータの精度。もしこれが正確でなければ推論が転けてしまいます。ところが、発表されている感染者数が感染実態を正確に反映しているか、という点で各国がバラバラ。これでは国際比較ができません。とくに日本の感染者数については、検査数が少な過ぎるので感染者数も少ないのではないかと指摘されているのはご存じの通り。まず、この実態から探ってみましょう(死亡者数についての疑義は後日予定)。

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR試験で陽性だったため都内の病院に2週間入院していた日本サッカー協会の田嶋会長が退院しました。4月2日のウェブ会見で、「保健所では、うちの家族ですらPCR検査をしてもらえなかった」と発言していたのでびっくり(出典はスポーツ報知4月2日)。

感染者が出たら家族や身近な人たちをすぐに調べるのが定石、でも当局はやっていなかった。濃厚接触者である家族すら検査しない日本の検査では感染の実態が掴めるはずもありません。ちなみに、PCR検査(以下、検査)とはSARS-CoV-2の感染を遺伝子レベルでチェックする検査のことです。

日本では当初、「武漢市を含む湖北省などからの帰国者や濃厚接触者」とか「発熱4日間継続で肺炎症状」などを検査の要件にして「保健所を通してのみ検査」していたため、感染の疑いだけでは検査ができませんでした。これでは、症状が出揃うまでに他人に感染させるかもしれず、重症者の治療にも遅れを生じてしまいます。

この方針には医師会をはじめ各所から批判が上がったため、その後保健所を通さずとも保険扱いで検査ができるようになった筈でした。でも、保険扱いのPCR検査は検査を出す段階で高いハードルが設けられています。また、外注でのPCR検査には1週間程の時間がかかるので現実的ではない、との臨床現場の苦情を聞いたり、先の田嶋会長談にもあるように濃厚接触者の検査すらできていない状況から判断すると、PCR検査のハードルは保健所経由であれ、保険扱いであれ、いまだに高いというべきところ。

次に、国際比較で見ると以下の通り(出典はオックスフォード大学のOur World in Data)。

これは人口100万人に対するPCR検査数を比べたもので、日本の検査数は韓国の52分の1、オーストラリアの38分の1でしかなく、ベトナムよりも少なく南アフリカ並みです。この少なさは恥ずかし過ぎる。検査能力がいくら立派でも測定に活かしていないのですから宝の持ち腐れ。(注意:このデータは3月20日時点です、念のため)

日本における検査の抑制状況は検査能力からも明らか。厚労省や官邸曰く、日本でのPCR検査実施能力については「現在は1日当たり9000件」とのこと。当初2月中は3800件、そしてつい先月は6000件でしたから随分増えてきたことがわかります。

でも一方で、検査実数について国会答弁では「3月6日から23日までの18日間で、保険適用分の検査件数は1058件。1日当たりの検査件数は約60件」(保険適用分)でした。(しんぶん赤旗4月3日)。現在は1日1300件という話もありますが、どちらにしても検査能力のほんの一部しか行っていないのは異常というほかなく、保健当局か誰かが検査数を裏でコントロールしていることを窺わせます。

検査能力と検査実数との大幅な相違について(いろいろ想像できますが)はっきりした理由はわかりませんが、これでは感染実態が掴めません。他国からの批判は当然で、駐留基地がある米軍からの批判の声もあるらしい。

医療崩壊に繋がるので検査数を絞っているのだという抗弁は、無症状者も重症者も同様に入院させてしまう日本での手続きの不備を白状しているだけ(制度上の欠陥)。他国の状況を見ると単なる言い訳に過ぎません(いまだに検査を増やせば医療崩壊になると思っている人はネットでもググってチェックして下さい)。

では実際のところ、感染者はどれくらいいるのか。先日、中国やプリンセス・ダイヤモンド号の症例データを使って、この国の感染実態は当局が公表している感染数の5倍という推測を行いました(感染しても8割は無症状か軽微な症状なので、5倍という計算 )。

4月3日朝現在、日本が公表している感染者数は2671人だから、実際は約1万3千人という推計になります。実際のところ、満員電車や各種店舗、飲食店等々で市中感染が進む現在、ほとんどが症状がひどくなるまで検査の遡上に上がらないのですから、もう少し多くの感染者がいるのではないかと考えられますが、実際は闇の中。

最後にもう1つ。最近検査で陽性になる感染者が急に増えてきたのはウイルス感染が爆発的に進んできたせいなのか、それとも単に検査数が増えた結果なのか。私は後者が無視できないものと考えていますが、都市封鎖などの理由づけにしたい当局は前者だと主張したいのでしょう、きっと。何かキナ臭い雰囲気を感じてしまいます。

・・・と書いてきてアップしようとしたら、東京新聞4月3日に「<新型コロナ>「感染者統計にゆがみ」 シカゴ大・山口一男教授 日本の少数検査に苦言」という記事が出ていました。そちらも参照下さい。