記憶はモノクロ?

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miti140111印象に残っている映画はだいたい白黒(モノクロ)じゃないの? そんなことを身内から云われました。
たしかに、「カサブランカ」、「第三の男」、「市民ケーン」、日本映画なら「七人の侍」や「東京物語」等々、印象的な映画はだいたいモノクロです。ということで、雪景色に続いてモノクロ話。

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映画好きならモノクロもカラーもどちらも鑑賞しているだろうけど、若い人は生まれた時からカラー映画しか知らないという人もいることでしょう。でも、VTRやDVD、ブルーレイで過去の作品を観ることはできるはず。

と前置きしておいて、あなたにとって印象に残っている映画は何ですか? それはカラー映画ですか、それともモノクロ映画でしょうか。

カサブランカ 特別版 [DVD]私は「カサブランカ」、「第三の男」、「市民ケーン」等がまず頭に浮かびますし、マイナーなところでは三船敏郎主演の「暴れ豪右衛門」(1966)てのもあります。どれもモノクロ。さらにいえば、カラー映画で印象的なシーンを思い浮かべようとすると、なぜか色のついた記憶が出てきません。なぜなんでしょう?

少し脇道に逸れますが、写真がモノクロからカラーに変わったのはいつ頃なのか。1935年にコダックが映画用のカラーフィルムを出したのが最初で、写真用はその翌年から。動画のカラー化の方が静止画より先でした。

市民ケーン [DVD]一般的なカタチでカラー映画が登場するのは1950年代以降のこと。日本では少し遅れ、1960年代頃からだんだんカラー映画に変わっていきました。日本映画では小津作品が比較的早くカラーになっていますが(1958〜)、黒澤映画がカラーになるのは「どですかでん」(1970年)以降のこと。「七人の侍」や「野良犬」そして「生きる」等はご存じの通り、1965年の「赤ひげ」までモノクロ。小津監督よりも12年も後にならないと黒澤映画はカラーにならなかったというわけ。

カラーフィルムがなかった時代ならともかく、なぜ黒澤監督は敢えてモノクロに拘ったのでしょうか。新しいモノに馴染めない頑固者だったのか、それともモノクロ自体に対する明確な目的意識があったのか。



モノクロとは極端にいえば白と黒のコントラスト。私たちはそのコントラストの中で、人物の動きや仕草を想像逞しくして頭の中で構成することになります。色の情報がない分、つまり色彩に意識が邪魔されることはありません。

印象に残る映画がカラーだった人へ是非お聞きしたい。その記憶にある映画のシーンは頭の中で色がついていますか? もし色彩がついていたら、その登場人物の表情や前後のプロットはどうですか? はっきり思い出せますでしょうか?

winter1401111
なぜそんなことを聞くかというと、私の場合、カラー映画というのは広大な砂漠や緑いっぱいの自然の景色、美しい朝陽や夕暮れなどなど、まず色彩鮮やかなのが頭に浮かんでくることはあっても登場人物の印象が薄いのです。また、印象的なシーンはどちらかというとモノクロっぽいのが多いような気もします。これは私だけの感想なのでしょうか。

もちろん、カラー映画がダメだということではありません。記憶の中のイメージが色付きかどうか。あるいは色が記憶を邪魔していないのかどうか。もし色彩が綺麗であればあるほど肝心のプロットや心の機微が隠れてしまうのだとしたら、もったいないですね〜。


……、なかなか疑問は尽きません。モノクロ映画の方が記憶に残るとしたら、それは何故なのか。モノクロ写真がカタチをより明確化するということに関係していそうだし、色つきで夢を見るのかどうかという話とも関係ありそうな気がしてきました。

tree140111

(追記)投稿日にはここで和菓子のことを書いていましたが、話を練っていずれ後日に。