シェール その2 原油、金価格の凋落

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gold1最近シェールガス革命について新聞・テレビでいろいろ取り上げられるようになり、雑誌メディアでも頻繁に特集を組んでいます。そのシェールガス革命の信憑性について、先日本サイトでも世界最大のソーラーパネルメーカーの凋落から読み解いてみました

今後米国がエネルギーを中東石油に依存することがなくなれば、中東や北海の原油価格は次第にドロップし、お金のかかる原発から次第に離れようという動きが進むことでしょう。また、米国経済がリーマンショック後の低迷から脱出することになれば、世界的にリスク選好が薄れ、国際商品相場が大きく動いていきます。ということで、今度は原油や金から相場を眺めてみることにしましょう。

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まず、原油。
円安のせいで、日本では原油価格のアップダウンがわかりにくくなっていますが、現在はバーレル当たり約88ドル。ドル建て価格でみると今年になってピーク値から10%以上はドロップしてきました。
(以下、チャートはすべてフジフューチャーズから参照)
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原油価格の異常な高騰はリーマンショックで一応終わり、最高値の約150ドルから一時は50ドルを切っていました。その後ゆっくり上昇し、100ドルを超えましたが、今年になってまた80ドルを切りそうな気配となっています。

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トレンドとしては昨年一昨年辺りから下落が続いていると云ってよいでしょう。つまり、原油先物は買いよりも売りが優勢になっているというわけ。日本では円安のせいで価格が下がっているという感じはないかもしれませんが、ドル建てでみると2年前の110ドルを天井に既に頭打ちのような雰囲気です。

次に金。
今週急激に大きくドロップしたのはボストン爆破事件の余波ですが、中国の鶏インフルエンザや北朝鮮のミサイル恫喝事件などで世界情勢が不安定になってきているせいもあるのでしょう。でも、リスク回避の現金化なのか、それとも他のモノへの乗り換えなのか、私にはもう1つ掴めません。
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もう少し長期にみてみると、金の値段はここ数年下がり始めていると観るのが一般的です。米国の景気回復の見込みが強くなっているためでしょうが、どこまで下がるのかは全く不明です。

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いずれにしても、原油も金はドル価格でみると確実に価格低下が始まっています。石油需要が減ってくるという見通しと米国経済の回復、これが背後にある理由だとすると、やはりこの動きを支えているのはシェールガスへのエネルギーシフト。そんなことが原油や金価格のドロップからも察知できそうです。

翻って、日本はどうか。金や原油はともかく、エネルギー源である天然ガスの価格が下がらない。米国でシェールガスの採掘が進んだために天然ガスの価格が石油よりも圧倒的に安くなり、中東原油の行き場がなくなってしまったのに、なぜでしょうか。

それは、日本の電気料金制度に大きな問題があります。総括原価方式という、かかった費用に上乗せして料金をとれるというオバカな制度があるため、売り手国が足下を見て高値で売りつけようとするし、日本の電力会社は(がんばったら自分の収入が減るから)安値で買おうという努力をしません。これが実情です。その結果、国民はバカ高い電気代を支払わなければなりません。

電気料金のアップは火力発電の比率が増えているからだ、あるいは円安だから、というのがどこぞの説明文句ですが、騙されてはいけません。根幹の理由は、国際価格とはかけ離れた高い値段の天然ガスを買っている電力会社のサボタージュ、交渉能力の欠落にあることを私たちは知っておくべきです。

蛇足。
アベノミクスは終わりの始まり。日銀は(彼らがめざす物価2%アップによって)今後の金利上昇が起こるため、国内銀行が大量に保有する国債価格が下落することを予想し、その影響の大きさを先日公表。金利1%アップで約6.6兆円の損失だそうです。このまま生産規模の増大や給与などの所得アップが追いつかなければ、銀行は破綻し、個人でも長期住宅ローンを変動金利で借りている人たちは悲惨な目に遭います(日本版サブプライムローン?)。そんなことが起きないことを望みたいのですが、イケイケの先にあるのはいつも急激な落ち込みです。80年代終わりに経験したはずじゃなかったんですか?

落ち込みといえば、気分だけで騰がってしまった株価は所謂バブルですから、「材料」で乱高下するのは必然で、突然ある日何かのきっかけで暴落してしまいます。株価アップで浮かれている人は要注意。