消費税三題

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「自民党野田派」政権によって強行された消費税増税。野田某でも公約違反だという認識はあるみたいで、謝罪の弁まで出ていましたが、民主党の信頼だけでなく政治の信頼まで奪ったことに対し、どこまで責任をとれるのでしょうか。

その消費税について、あまり知られていない話題を3つ。トヨタ等の大企業10社で九千億円の消費税還付を受けていること、一方で非課税の病院等は税を還付されずに泣いている事実、そして中小零細企業が消費税の支払いで困窮している話。

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まず、消費税の還付、いわゆる戻し税について。

消費税として集められるお金は約10兆円(平成23年度)。租税全体では40兆円なので4分の1が消費税というわけですが、輸出関連企業には驚愕・巨額なお金が還付されています。

どういうことかといえば、商品を海外に輸出する場合、海外で付加価値税(VAT)がかかる場合があるので国内消費税と2重になってしまいます。それを防ぐために輸出企業について消費税分の戻しが行われています。これが「輸出戻し税」というものです。

2010年度でいえば、3兆円3千億円ですが、上位十社だけで約9000億円となっています。戻し額の一位はトヨタ、2010年で2200億円の還付です。国内販売分の消費税と差し引いての還付ですから、トヨタやホンダの車を世界中に売るために国民が払った消費税を供出しているような構造にも見えてしまいます(苦笑)。こんな話、知っていましたか?

輸出すれば二重課税になるから国内消費税は還付しようという理屈はわかります。でも、実態はどうなのか。たとえばトヨタの下請け孫請けにしても輸出関連産業なはずですが、トヨタに納める限り、消費税からは免れ得ません。だって、輸出しているトヨタ以外は消費税の還付はないからです。

それら下請けの消費税分を超大企業は本当に払っているのでしょうか。値引きと称して払わなかったり、競争を装って競合会社を選んだりはしていないのでしょうか。見方を変えるなら、中小零細下請けが命を削って支払った消費税を、トヨタ等の輸出大企業だけが戻し税の還付という形式で受け取っているのは実情ではないのか。

なぜそんなことを云うかといえば、アンケート調査等で中小企業は消費税の転嫁がやりにくいことを吐露しているから。転嫁するにしても時間遅れがあるとしたら、その期間分の消費税は上位企業の一人占め状態になるはずです。

まぁ戻し税の是非は横に置いて、これが消費税の実態の1つです。輸出大企業中心の経団連などが税率アップを歓迎するのもそういう処にあるのは宜なるかな。官僚&民主党野田政権に圧力をかけている組織の正体が垣間見てきます。

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不思議なことに、同じく消費税がとれない業種でも還付のない処もあります。医療機関です。

医療費は非課税ですから、病院などの医療機関では自らのサービスでは消費税を徴収できません。でも、機器や備品、もろもろには消費税がかかるので、それらの還付がないと払い損になったまま。この金額がどの程度あるのかというと、「大学病院や大病院では年に億円単位」という話なので全国的には1兆円を超える規模になるのかもしれません。

出典:医療機関の消費税、「損金解消」を 「払いっぱなし」もう限界

国の言い分は、病院については既に診療報酬の中に消費税分を補填しているとのこと。でも、すべての要因について補填しているわけではないし、実際的にかかった税金の多寡で評価する必要があるのではないかと推察します。

海外輸出企業は還付で優遇、他方で病院は還付なしの払い放しで損という不公平さ。これもまた消費税の実情です。輸出関係の大企業が国政の支配権を握っている証拠の1つでしょうが、今回の税率アップでまた拡大するわけですから病院側はやりきれませんな。そのしわ寄せが患者の方に向かわないことを願います。

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3つ目は消費税の滞納について。
国税庁は租税の滞納について平成21年度は約1兆5千億円で、そのうち消費税が4419億円だと発表しています(平成22年度租税滞納状況について 国税庁 平成23年7月)。つまり滞納額の3分の1が消費税だというわけです。

いきおい、滞納業者への風当たりは強くなり、生命保険の差し押さえ・解約換金などを求めたり、半ば強引な取り立てが行われているようです。最近は取り立てにややこしい民間企業を使う行政機関もあるらしく、国家権力ですから並のサラ金よりもずっとこわい。

預かった消費税だから国に寄こせというわけでしょうが、払えないのは単にせこいとか狡いというだけではないでしょう。日銭を自転車操業で回さざるを得ない実態を考慮するなら、消費税を払えないような仕組みこそ問題なのだと考え直さないと、今後の税率アップで事態は余計に悪化していきます。

零細企業の取り立てに執心する暇があるなら、国税庁は大企業の不正や税金ゴマカシにも同等以上の努力を払って欲しい、そっちの方が金額も大きいだろう等と思うのは私だけではありません。ましてや、消費税還付の仕組みで儲けているかもしれない超大企業をそのままにしておけば、いずれ「打ち壊し」的なデキゴトが出てくることもありそうです。そんな状況はご免こうむりたいですね。

以上、消費税の背後に蠢く厄介な話3つでした。石油などの二重課税はいまだに放置したままで、輸出企業の二重課税だけはしっかり排除するというやり口は国&官僚&政治家がいったい誰を大切にしているのか、もう私が説明するまでもないでしょう。