問題は原発比率ではなく社会のシステムだ

3.11

国民の7割以上が原発ゼロの社会を望んでいるというのに、原発推進派は政治家やメディア著名人を使って拡大延命を図ろうとしています。でも、原発比率云々という話そのものが原発推進のための議論であることをきちんと指摘する人はメディアでは見つからず、イライラしていました。でも、今朝わが意を得たりという論考を発見。それは、富士通総研主任研究員 高橋 洋氏による、「原発を生み出すシステム」か「再エネを生み出すシステム」か――。選ぶべきは「原発比率」ではなく「システム」である―― です。彼の議論は・・・

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この国の「エネルギー基本計画」について、原発の依存度を2030年までに0%、15%、20〜25%の比率にするという議論が続いています。公聴会などで明らかになったのは、国民の70%以上がゼロ%、つまり原発に依存しないエネルギーを求めているという事実でした。当初の予定とは違う結果になったせいか、国は8月末の結論を先送りにするようです。原発推進派に絡み獲られている政権の姑息さというべきでしょうか。

でも、原発比率をいくらにするかという議論はちょっと変。というのは、原発ゼロの社会と原発推進の社会ではその中味や制度、そして効果も全く違ってくるから、簡単に較べようがありません。先にあげた高橋さんに云わせると(以下引用はすべて上記文献から)、

「原発を生み出すシステム」と「再エネを生み出すシステム」は、本質的に異なる

とのこと。その通り!

どういうことかといえば、

原発は数千億円を投資し、計画から何十年もかけて完成させ、更に何十年もかけて回収する、典型的な大規模集中型電源である。巨大な電力会社しか担うことができず、かつ研究開発や立地対策、電源開発促進税、総括原価方式の認可料金といった形で、政府の介入と支援が不可欠である。

一方で、

再エネに象徴される小規模分散型電源を生み出す仕組みは、これとは大きく異なる。風力や太陽光は、1つ1つが小さく技術的障壁も小さいため、様々な新規参入者が発電事業を手掛けることができる。

とし、発送電分離の必要性や消費者が需要行動を変化させる可能性に触れながら、「原発を生み出すシステム」となっていたこれまでの日本とは異なる社会、システムを想定・希求することが大事であるとしています。そして、

発送電分離をすれば電力会社の独占力の源がなくなってしまい、発電分野における競争に直面せざるを得ない。そこに小売全面自由化が組み合わされれば、厳しいコスト意識が求められ、リスクが高い原発に悠長に投資できなくなる。市場開放や競争促進は、原発事業と相容れないのである。

と指摘しています。これこそが脱原発のために必要とされる道筋とその効果でしょう。したがって、彼の結論は、「エネルギー選択」は「システム選択」なのである、と実に明快でシンプルです。

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このサイトでも繰り返してきましたように、脱原発とは単に原発を止めたらいいという話ではありません。もちろん止めなければ話にはなりませんが、今の社会そのままなら電気が足りないとか生活が不便だなんて苦情が出てきて再稼働なんて話がすぐに沸き上がります。去年から今年にかけて経験したのがそうだったじゃないですか。

そんな脱原発では元の木阿弥です。そうならないためにも、原発に頼り切った私たちの生活を変え、原発を支える社会の仕組み・制度を作り変えていくことが肝要です。前者は個人個人や組織毎に考え実行すべきことですし、後者は政治や社会全体の取り組みがないと不可能です。高橋さんの「システム」議論は後者の議論の大切さを訴えています。是非精読して中味を噛み締め、そして拡散して下さい。