黒い雨の行方

.opinion 3.11

65年前の黒い雨がまた俎上に上ろうとしています。米国とそれに与する日本当局によって隠蔽されてきた原爆被害の1つ。東電原発事故を経て、新たな検証は如何なる方向へ広がっていくのでしょうか。

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2011年7月10日  読売新聞によると、

「長崎原爆の投下当時、爆心地から約7.5キロ離れた長崎市間の瀬地区で放射性物質を含む「黒い雨」が降ったとの証言があり、広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授らが9日、現地で土壌調査を行った。長崎原爆で使用されたプルトニウムが含まれているかどうかを分析して被爆線量も推計し、年度内にも結果をまとめる」

とのこと。

ここ数年、原爆症認定訴訟で原告側の勝訴が続く中、被曝被害の実態に改めて光が当たり始めていますが、今回の黒い雨調査もその一環です。

なぜ65年前の話を蒸し返すのかと訝しがる人がいるかもしれません。でも、ちっともおかしくない。だって、今までは原爆の爆心から3.5km以上離れた地域は被曝地域ではないと「定義」され、爆発後100時間以内に2km以内に入市したり、爆発後2週間以内に1週間以上2km以内にいないと原爆症認定の土俵にも上げないというのが国の言い分だから。そんな馬鹿な!と思うのが当たり前ですが、その馬鹿げたことをやってきたのがこの国の被曝者対策。被曝者のことを考えているんかいな~ですわ、ホンマ。

被害をできるだけ小さく見せたい押さえたい米国側と、それに与してきた日本の疫学者や放射線防護学者たち。その御用学者の系譜にいるのが、長瀧 重信(元放影研理事長)や神谷研二(広大)、それに福島県立医科大学の副学長へ突然昇進した山下俊一等々であることも既に指摘した通り。その彼らが、今回の原発事故にあたり、誰かの命を受けて官邸ジャックを果たし、被曝からの避難退避を求める人たちに対する抵抗勢力を形成しています。

65年間も放置されてきた黒い雨問題。放射性物質を含んだ黒い雨の話なら知っているという人も多いはず。だって、小説や映画で訴えてきた人たちがいました。映画に出演したことが契機で、死ぬまで被災者の安寧を願っていた女優もいました。でも、国も学者も被曝被害を過小評価することが国益であるかのごとく、知っても知らない振り。でも、命を守れない国に未来はないゾ!

フクシマの原発事故で、国はヒロシマ・ナガサキで培ったマヤカシのテクニックをさらに洗練させ、御用メディアを活用しながら、フクシマでの被曝を安全安心だと言い張りたいのでしょうが、そうはいきません。

今回の黒い雨の調査が新たに人々の命と生活を守るような展開を産み出すことを期待したい。そのことが引いてはフクシマでの被曝の隠蔽を打ち壊す契機になるはずです。ヒロシマ・ナガサキもフクシマも救済できるような道が開かれることを強く願っています。フクシマの被曝者にまで65年以上も苦労させるような国であってほしくないものです。

おまけ。
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、すべての原発の操業を順次停止し、廃炉にするよう国に求める今年度の運動方針を正式決定した、と報じられました(7月13日朝日他)。今まで原子力の平和利用なんてのを言い続けて原発を容認してきた被団協でしたが、今回の大きな転換は大歓迎。