やっぱり危ない福島の学校プール なぜ非常時にわざわざ泳がせるのか

.opinion 3.11

某サイトに紹介リンクがついたらしく、「やっぱり危ない福島の学校プール こどもの健康を守る気がない文科省プール見解」のヒット数が急上昇中。ということで、補足説明を少し。

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インターネットのQ&Aサイトで、プールで泳いでも問題なし、安全だと書かれてあるのを見ました。曰く、水中の線量を計算して○●ベクレルだから、厚労省の定める放射性セシウムの基準値200ベクレルよりもずっと小さい、というのが根拠のようです。とんでもない話だ。安全を政治的に判断しているからです。

WHOが勧告する飲料水の国際ガイドライン値(放射性セシウム137)は1リットルで10ベクレルなんですが、もともと日本には放射性物質の飲料水基準は存在しませんでした。ここにも原発は安全だという思い込みがあるのでしょうが、それは横においておいて、東電福一原発事故で環境へ大量の放射性物質がばらまかれてしまい(注)、飲料水からも放射性物質が相次いで検出される事態になってしまいました。

そんな状況ではWHO勧告値を採用するのはとても無理、ということで国は政治的に200ベクレル(放射性セシウム)へ嵩上げしました。

水の安全性を考えるのなら、WHO勧告基準の10ベクレルよりも小さいかどうかで判断すべきで、放射性セシウムの基準が200、プール水はそれ以下だから安全なんて云うのはブラックユーモアでしかありません。つまり、安全かどうかを政治的に嵩上げした数値で評価するのは愚の骨頂。そういう「専門家」は「被曝を強制する側」です。

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もうひとつ。学校プールは循環型の浄化装置で汚染が除去できるので安全、みたいな説明もありますが、これまたとんでもない。

学校プールの浄化装置は簡易砂ろ過のような設備なので、比較的大きめのゴミや夾雑物には対応できても水中の微細な汚染物質はうまく除去できません。それが実態。水に溶けているような放射性物質はまず除去できません。ろ過層でいったん捕捉できても、それを除去しない限り、そこが汚染源になるだけですからさほど意味がありません。

東電福一原発事故はいまだ終息していません。放射性物質の漏出はまだまだ続いています。放射性降下物の放射能は福島だけでなく北関東でも1平方kmあたり数十メガベクレル以上の日もあるくらいです。雨でも降ればさらに屋外プールは汚染貯めになってしまいますから、プール水中の放射性物質の濃度は日々増えていきます。月に2回くらいの水質調査で本当に大丈夫なのかと云いたいくらい。校庭でまともに遊び回れないのに、水着1つのプール環境が大丈夫なんて、どんな発想なんでしょうか。滅茶苦茶です。

今は非常時。水については国際的な水質のガイドライン値を守れないので、例えば放射性セシウム137については国際基準の20倍を日本の独自基準に仕立て上げ、「政治的に」違反ではない状況を演出しているが実情です。だから、その暫定指針を拠り所にして安全を説明するのは科学ではなく政治。そんな非常事態にプールで泳げるかどうかを論議するのは意味のあることのようには思えません。

今年は放射性物質による汚染が問題なのでプール授業は止めましょう、という方が筋が通っています。どうしても学校当局が水泳授業をしたいなら、汚染地から遠く離れた被曝の心配のない場所で疎開型プール授業を行ってはどうでしょうか。

(注)原発事故とか福島原発事故とかにしないのは、東電が動かす原発であり、責任が東電にあることを明確にするため。東電原発事故とか、東電福一原発事故と長めになりますが御勘弁。