原子力安全委員会すら認めていない学校被曝指針

.opinion 3.11

こどもたちの放射線被曝問題について、政府交渉(5月2日)が開催されました。例の20ミリシーベルト/年は誰によって決められたのか等々、交渉の中で明らかになったのは行政当局や原子力安全委員会のあまりにも無責任な対応でした。

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こどもは大人よりも放射線への感受性が高く、被害を受けやすいことが知られています。しかし、4月19日夜に文部科学省は、学校等の放射線量として「3.8マイクロシーベルト/時間以下であれば、年間20ミリシーベルトを越えないので良い」との方針を公表しました。とんでもない数値ですが、文科省は原子力安全委員会の助言に基づいて決定したと説明していました。

市民側の要求で開催された前回の政府交渉(4月21日)で、原子力安全委員会事務局は、4月19日の午後2時頃に原子力災害対策本部から「学校等の基準を20ミリシーベルト/年に設定して良いか」と問い合わせを受け、午後4時頃に「差し支えない」と返答したと説明しました。しかし、この2時間の間に正式な原子力安全委員会は開催されておらず、議事録もない、と説明していました。前回の交渉については本サイトでも紹介しました。

今回(5月2日)の第2回政府交渉でも、原子力安全委員会の会議は4月19日に開催されておらず、会議録もないことが確認されました。しかし、原子力安全委員会事務局は、委員会(5人)のうち4人は同日15時過ぎから会合をしていたと説明し、なぜその会議録を出せないのかを説明できませんでした(YouTube:5月2日「子どもたちを放射線から守れ政府交渉」 5/8 の6分25秒~)。(とても世間に公表できないような会議内容だったのかもしれません)。

そして、市民側から「こどもに対して20ミリシーベルトを基準にして良い、と言っている専門家は誰か」と問われると、原子力安全委員会事務局は、「こどもに対して年間20ミリシーベルトを基準とすることは、原子力委員会として許容していない」と発言しました(YouTube 政府交渉ビデオ6/8の0分10秒~)。そして原子力安全委員会の委員長・委員達のうち誰も20ミリシーベルトを許容していない、とも発言しました(YouTube 政府交渉ビデオ6/8の9分20秒~)。

さらに市民側から「それでは、原子力安全委員会はこどもに対して何ミリシーベルト/年までなら良いと考えているのか」と問われ、事務局は「まだ決めていない」と返答しました(YouTube 政府交渉6/8の4分40秒~)。市民側から「いつ出すのか」と問われ、事務局は「今後モニタリングの結果を受けて考える・・・・・」と返答し、実測して実情に合わせる形で決める腹づもりらしいことを伺わせました。

一方、文部科学省の役人は、学校などの基準として「20ミリシーベルトという数値」を出すように文科省の方から原子力災害対策本部に要請し、原子力安全委員会のお墨付きをもらった、と説明しました。そして、郡山市などが学校校庭の除染を始めたことに対して、文科省役人は「そんな必要ない」とシラを切り続けました。「他の市町村から校庭などの除染をすべきかどうか、問い合わせがあればどう答えるのか」という質問には、「(土壌除去などの除染は)必要ないと答える」と居直っていました(YouTube 政府交渉4/8 の1分15秒~)。

市民側から「ICRPでさえ、被曝を低減するためにあらゆる処置を取ることを前提に、基準を提示している。文科省は被曝を低減するために何をしているのか」と問われると、役人は「低減処置の一環としてモニタリングをしている」と答えました(YouTube 政府交渉4/8 の11分25秒~)。しかし、市民側から「モニタリングは低減処置と云えるのか」と問われると、「低減処置ではない」と認めました。

今回の政府交渉でも、あまりにもお粗末な文科省役人・原子力安全委員会・同事務局の対応に、あきれるばかりです。こんないいかげんなやり方で文科省が決めた、こどもに対する20ミリシーベルトという被曝基準は、是非とも撤回してもらわなければなりません。

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ちなみに、今回の交渉で政府側として答えているのは、以下の2名です。
役人席中央のグレーの作業服姿(文科省・科学技術学術政策局・次長・渡辺 格氏)
隣のネクタイ背広姿(原子力安全委員会事務局・管理環境課・課長補佐・クリハラ氏)

今回の政府交渉を要請したのは、
グリーン・アクション
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
国際環境NGO FoE Japan

政府交渉の窓口は、福島瑞穂・参議院議員(社民党党首)の事務所とのことでした。