国の指針に従うのは国民の義務? 被曝を強制する側の論理

.opinion .お知らせ 3.11

昨日5月3日福島県二本松市で開催された講演会のおける山下俊一氏(長崎大)の発言。原子力ムラを支える学者の言い分がまさに被曝を強制する側の論理で動いていることを立証するかのような迷言連発。曰く…

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講演会場からの鋭い質問が、山下氏の迷言をたくさん引き出しています。たとえば、

山下:みなさんは他にチョイスがない。逃げられない人はそこで道を切り開いていくしかない。住み続けなければならない。広島長崎がそうだった。

・・・何やそれ。福島県民は東電福島第一原発からの放射線被曝を甘んじて受け入れろというのでしょうか。福島県民があなたに求めているのは放射線被曝の危険性はどうかということでしょ? 政治的な説明ではありません。

山下:チェルノブイリの被害は、放射性ヨウ素による、こどもの甲状腺がんだけ。

・・・これは明らかな誤り。旧ソ連は被害を知らしめないため、過小評価した報告書を作成しました。原発推進では利害一致している国際原子力共同体(国際原子力マフィアともいう)がご都合主義的に採用しているだけ。被害の実態は現地調査などで次第に立証されていますので(後日私も触れましょう)、彼の発言は「国際原子力マフィアではそういう話になっている」というだけであり、それでは学者として失格です。

山下:内部被曝と外部被曝は分けて計算できないからわからない

・・・わからないのなら安全側にとるのが住民の健康を守る態度です。わからないから無視するというでは、被曝者の健康問題を無視したということ。これだけでも犯罪的。

山下:(もし5年後10年後市民に影響があったら責任をとれるのかという質問に対し)将来のことは誰も予知できない。神様しかできない。起こった病気が放射線のせいかどうかを調べるには福島県民全員の協力が必要。(中略)だから、私はイエスもノーも答えられない。

・・・だからこそ、安全側に考えるとか、評価を厳しくするとか、いろいろな方法を考えるべきです。なのに、彼をそれを放棄してあれこれ説明をするのですから、専門性を放棄しているとしか云いようがなく、犯罪的な言辞という他はありません。

山下:年間20(ミリシーベルト)という国の指針が出たんだから、国の指針に従うのは国民の義務です

・・・原子力安全委員会ですら国の指針そのものに関与していないことが判明している現在、誰がそれを決めたのかもはっきりしません。山下説明はそんなこととは関係なく高圧的です。いつ終わるかもわからない被曝状況の中、緊急避難的・一時的に設ける非常時の指針にそのまま従えというのは、福島県民に動物実験を強いる論理でしかありません。

そして、きわめつきは次の発言!

山下:私は安全を皆さんに言ってない。少しでも安心してもらえればいい。

・・・語るに落ちました。彼は被曝の安全性を説明していたのではなく、安心を説いていたらしい。曰く、私は安全とは云っていない、私は安心を云っているだけ、安心というのは1人1人違うんです、という説明で、それをリスクコミュニケーションだと考えているようです。とんでもはっぷん。それは被曝を強制する論理を権威的に押し付けているだけ。リスクマネージメントなる手法が支配・強制のツールだということをもろに暴露してしまいました。

総じて彼には、モノゴトを安全側に考えるという配慮が全くありません。放射線被曝については10年後・数十年後に被害が出てきても自分は亡くなっているから責任のとりようがない、他の病気といっしょになって曖昧になってしまうから分からない(問題ない)と考えているみたい。

原発労働者などの被害については全く無視していることも発言の中で明らかになりました。要するに、自分達に都合のいいことだけを採用して勝手に安全性を論じているだけ。こんな人物が放射線医学の専門家で、そんな人物を福島県が放射線健康リスク管理アドバイザーに任命しているのはブラックユーモアでしかありません。

最後に1つ、福島県の皆様へ。

トンデモナイ学者の講演会を拍手で終わらせてはいけません。あなたたちを被曝モルモットにしようという連中に拍手しているようなものです。理不尽な被曝強制や棄民化対応に対し、怒りを表現して下さい。

相手にとって都合がいいのは、長々とどうでもいいような意見を述べて時間つぶしをしてくれる人、痛くも痒くもない質問をいくつも並べてくれる人です。相手が逃げ帰るような圧倒的質問で追い込んで下さい。最後は拍手でなく、ブーイングなり足踏みなりで締めくくって下さい。被曝を強制される側に甘んじてはいけません。