イエロー
2024/10/26
見ていると力が沸いてくるような黄色は私のお気に入り。そんな色の服を見つけると欲しくなるのですが、これがなかなか見つからない。アパレル方面の人に尋ねると、黄色は売れない(のであまり作らない)とのこと。でも、ヨーロッパでは少し見かけるので、日本での話のようです。幸い今秋珍しく黄色のセーターを1つゲット。
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女性用の衣服で黄色は時々あるようですが、男性用の衣服で黄色はなかなか見つかりません。あってもドギツかったり、黄茶色だったり、アイボリーに寄っていたり。
ところが幸い、今回スコットランドのセーターで黄色を見つけました。10月初旬に京都大丸のお店で尋ねると日本在庫は残り1枚とのこと、すぐに取り寄せて購入しました。

そんな黄色ですが、先週もっとイイ黄色に遭遇しました。数年前から着物にのめり込んだ連れ合いのお供で出かけた滋賀県立美術館。ちょうど開催中の「人間国宝 志村ふくみ 色と言葉のつむぎおり」の中の1点です。
前期展示の60点以上の着物のどれも色あいが素敵でしたが、中でも梔子(くちなし)で染めて織られた紬の黄色の、なんとまぁ素晴らしいこと! 念のために云えば、実物は写真よりも更に美しい黄色です。こんな色のジャケットがあったら私は即買いですわ(笑)。
草木染とは花ではなく枝や樹皮を使って染める技法(例外は紅花)とのことですが、梔子からこんな黄色が生まれるとはびっくり。自然の命が色に変換される草木染の奥深さに改めて感じ入るところです。
今年100歳となる志村さんの作品についてはネットで引いてもらうとして、展覧会パンフに使われている着物がこの梔子染めでした。行くまでパンフを見ていなかったので余計に驚いた次第です。
ところで展覧会を見ながら、よくもまぁこんなにたくさんの、それも国宝級の作品が散逸せずに残っているものだと思っていたら、20年前にある人が滋賀県立美術館(旧名:滋賀県立近代美術館)に60点以上を寄贈したことを知りました。その人とは、佐久間幸子さん、新橋で芸妓さんをされていた方です。
帰宅してから調べてみると、佐久間さんは日本伝統工芸展で志村さんの着物を見て「この着物を着たい」と惚れ込み、工芸展等に出品される志村さんの着物を毎年購入されていたとのこと。佐久間さんは大金持ちだった訳ではなく、生活を切り詰めながら毎年購入されていたらしい。その数60点以上。そして、20年前の2004年にそれら全てを滋賀県立美術館に寄贈。
佐久間さん、2004年の記念式典時には志村さんの着物が手元に一着も無かったので川端康成さんの形見の薩摩絣を着用したとのこと(それも凄い)。細川護立氏(護煕さんの祖父)らの指南も受けて佐久間さんは美意識を磨いたようですが、御本人の目利きと気風は間違いなし。凄い人がいるもんだ。感謝。
とにもかくにも先の梔子染めをはじめ、志村さんの着物の数々を現在見ることができるのは佐久間さんのおかげ。ダビンチがメディチ家の理解と支援を得て多彩な芸術を開花させたように、志村さんも佐久間さんからの理解と支援を力に変えて草木染めの紬織を深化させたのかなぁと思う次第です。