生ごみ・コンポストの読書案内(2)

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読書案内その1では、土壌微生物を用いた生ごみ・コンポストの本を紹介しました。読書案内その2は、ミミズを使った方法です。なお、この案内は『新しい志賀町を求める会』に書いたものと同じです。

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他の生ごみ・コンポストとどこが違うかといえば、生ごみを分解してくれるのが微生物ではなく、ミミズという目に見える生物で、日頃から馴染みがあるいうことでしょうか。

ミミズといっても、普段よくみかけるフトミミズではありません。フトミミズはミミズの中でも大型の部類で、枯れ葉などを好み、生ごみ・コンポストには向きません。生ごみを食べてくれるのはシマミミズという種類のもの。シマミミズは日本でも生息していますが、釣り具屋さんで釣り餌として売られているミミズという方が分かりやすいかもしれません。そのシマミミズが、生ごみ・コンポストの時には働き者として登場します。
 
だれでもできるミミズで生ごみリサイクル―ミミズに学ぶ環境学習1)だれでもできる ミミズで生ごみリサイクル  
メアリー・アップルホフ 1997 佐原みどり訳 合同出版 1999 1500円+税

 1997年に米国で出版された本で、原題は「Worms Eat My Garbage」。ミミズが私のごみを食べる・・・とは、まんまのタイトルではないですか。ミミズ箱を作り、そこで家庭の生ごみを餌にしてミミズを飼う。それだけの話ですが、ミミズの種類、生態、上手な飼い方、殖やし方、そしてミミズコンポストの活用方法まで、全部まとめて紹介するという盛り沢山の内容です。米国の本ということで、日本にそのまま当てはめられない条件も一部ありますが、ミミズコンポストの解説本として読みやすい本です。
 私はこの本をミミズコンポストを開始した後で読みましたが、柑橘類のリモネンがミミズにとって有害であると書いてあり、やっぱりそうだったか、とうなってしまいました。

生ゴミを食べてもらうミミズ御殿の作り方―ミミズコンポスト完全マニュアル2)生ごみを食べてもらうミミズ御殿の作り方  
佐原みどり   VOICE  2000  1800円+税

 2冊目は1)の翻訳者が執筆したもの。1)の本は、どちらかというとミミズをペット感覚で扱っているような節がありますが、こちらは少し実利的でノウハウ満載です。おそらく、1)で不足している点を、翻訳者が自らの実践のもと整理し直したということでしょう。非常によくまとまっています。
 上記2冊は米国での経験が下敷きになっていますが、暑さ寒さのメリハリがある日本での実践例については、佐原さんが運営しているHPの掲示板などが参考になるでしょう。

 もし、ミミズコンポスターにチャレンジしようという方がいらっしゃたら、相模浄化優企画などで購入する時に簡単なマニュアルがついてきますので、それを読破するだけでもかなり理解できます。

ミミズと土と有機農業―「地球の虫」のはたらき3)ミミズと土と有機農業
中村好男   創森社  1998  1600円+税

 3つ目は、少し学問的な本ですが、読みやすいので難しさを感じさせません。ミミズという動物が土壌圏でいかに大切な役割を果たしているのか、どんな種類がいるのか、「自然の鍬」としての働きとはどういうものかを順に解説した後、農業との関係に言及し、土壌圏活用型の有機農業への道筋を説いています。ミミズコンポストのノウハウ本ではありませんが、是非一度読んでほしい内容です。イチオシです。

200万都市が有機野菜で自給できるわけ―都市農業大国キューバ・リポート4)200万都市が有機農業で自給できるわけ 都市農業大国キューバ・リポート
吉田太郎  築地書館 2002  2800円+税

 ソ連崩壊で石油や化学肥料の輸入が止まってしまったキューバ。都市のあちこちで野菜栽培でも何でも出来ることはやるしかないという状況となり、登場したのがミミズを使ったコンポスト。つまりミミズの糞を有機肥料に使うことで化学肥料を使わない農業を実現できた、という下りがこの本に載っています。有機肥料を得ながら、生ごみも処理しているわけですから、一石二鳥というわけです。これこそ究極の生ごみ・コンポストではないか、と私は考えています。
 
ドイツを変えた10人の環境パイオニアみみずのカーロ―シェーファー先生の自然の学校5)ドイツを変えた 10人の環境パイオニア
今泉みね子   白水社  1997  1800円+税
6)みみずのカーロ 
今泉みね子   合同出版 1999 1300円+税

5)の本には、自然エネルギーの活用やごみ問題への取り組みなどが触れられていますが、第7章に「ゴミのない学校を実現させた小学校長」というのがあり、そこで、ミミズを使った生ごみ・コンポストの実験の話が登場します。

その小学校長先生を題材にした本が、同じ作者の6)です。
ミミズの話だけというわけでありませんが、環境教育という観点でごみ問題を考える時に、示唆に富む本です。

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(おまけ)
学問的探求心のある方には、さらに2冊紹介しておきましょう。古い文献ですが、歴史的な価値は大きく、土壌微生物学やミミズ学の専門書です。この方面の理論的根拠はこういう文献から出ていると知っておくのも損はない(かも?)。

・土と微生物   土壌微生物研究会編  岩波書店  1966(絶版)
・ミミズと土壌の形成
 C・ダーウィン 1881 渋谷寿夫訳   たたら書房  1979(絶版)
 原題:The formation of Vegetable Mould through the Action of Worms
 翻訳者は違いますが、冨山房百科文庫版(1949)、平凡社版(1994)等もあります。

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