生ごみ・コンポストの読書案内(1)

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生ごみ・コンポストに関する読書案内その1です。なお、この案内は『新しい志賀町を求める会』に書き込んだものと同じです。

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生ごみ・コンポストは難しそうで簡単。いや、簡単そうで難しい。どちらもよく聞く意見です。
簡単だという所以は、思い立ったその日から取り組むことができ、そこそこ上手くいくということでしょうか。一方、難しいという意見の持ち主は、何かの拍子にムシがたくさんわいてきたり、ニオイがきつくなって困った、家族が嫌がった、という経験があるのかもしれません。

どちらが正しいか、なんてことを議論する前に、生ごみ・コンポストの理論的背景を勉強してみてはどうでしょう? なぜ生ごみが土に変わるのか、どうやれば上手くいくのか、なぜムシがわくのか、どうしたらそれを避けられるのか、・・・だんだん明らかになってくるはずです。そこで、生ごみ・コンポストに関する参考書をいくつか紹介してみましょう。
やってみませんか 家庭でできる生ごみの処理 生ごみ堆肥化・分解大作戦 (サイエンス・シリーズ)1)やってみませんか 家庭でできる生ごみの処理
森 忠洋 編著  パワー社 1997 1600円+税
 ちっちゃな本の割には値段がそこそこしますが、内容は値段以上。生ごみの定義、ごみの性質などの基本的な説明からスタートし、土壌微生物の知識、コンポストの方法と実例、そして、なぜ生ごみが分解するのかという科学的な説明まで、生ごみ・コンポストに必要な理解はだいたい得られます。
 とくに優れているのが実例集で、生ごみ処理機の現状や問題点、木箱を使った方法、それに中型大型の生ごみ・コンポストの処理や先進的な地域での実際例と続き、最後は生ごみをメタン発酵させてコーヒーを飲む人の例まで紹介されているので、読んでいて楽しくなってきます。
 蛇足ながら、その生ごみ・メタン発酵・コーヒーを紹介している桜井薫さんは、ソーラー発電のアジアでの普及に尽力している方で、我が家のソーラー発電装置の設置者でもあります。

堆肥のつくり方・使い方―原理から実際まで家庭でつくる生ごみ堆肥―よくある失敗防ぐポイント

2)堆肥のつくり方・使い方 原理から実際まで
藤原俊六郎   農文協 2003 1500円+税
3)家庭で作る 生ごみ堆肥 よくある失敗 防ぐポイント
藤原俊六郎監修 農文協 1999 1400円+税
  
 2)は、堆肥、つまりコンポストの原理と実際例を紹介したもの。3)は、このコンポストを家庭の生ごみから作ろうというスタンスのもの。どちらも、藤原俊六郎さんの尽力による本ですが、農業サイドからの観点で書かれたものというのが特長です。
 2)には、堆肥とは何か、栽培にとっての必要条件を満たすにはどうしたらいいのか、施用に際してどういうことを考慮すべきか等について、詳しい説明が載っています。できたコンポストの堆肥としての施用に関心のある方にお奨めの本です。
 3)の方は、生ごみ・コンポストのノウハウ本です。好気性発酵、嫌気性発酵どちらについても、よくある失敗例を列記しながら、どうしたら解決できるのかを解説しています。
また、電気機械式の生ごみ・コンポスト装置についてのノウハウや、作物別の施用方法の簡単な紹介もあります。生ごみ・コンポストに行き詰まった時にも役立ちそうな本です。

生ごみ・堆肥・リサイクル4)生ごみ 堆肥 リサイクル
岩田進午/松崎敏英 家の光協会 2001 1800円+税

 この本は先の三冊と比べて、社会的な側面を取り上げた本です。まず、山形県長井市における生ごみ・コンポストの紹介に始まり(これがなかなか圧巻)、次に農耕地をとりまく物質循環や有機物質不足と、それがいかに現代の農業生産を歪ませているのかを解説しています。その上で、なぜ、生ごみ・コンポストが必要なのかを説明しながら、そのことが私たちの社会を変えていくという道筋を明快に示しています。また、生ごみの焼却がなぜダメかという点についても、理論的展開を行っています。読んでいて、そうやそうや、その通りやと何度もうなずいてしまいます。
 この本の優れた点のひとつは、過去の失敗例をきちんと紹介していること。たとえば、1960年代後半に全国で生ごみ・コンポスト大型工場が47カ所動いていたが、それがことごとく失敗したことや、70年代から80年代にかけて実施された官民一体の大型都市ごみ再生プロジェクト「スターダスト80」(158億円!)の挫折に関する分析などがそうです。「分ければ資源、混ぜればごみ」の基本を忘れ、機械的なごみ処理に過度の期待をかけたという問題点を浮き彫りにしている所は、示唆に富んでいます。ただ、著者の言う「住民参加型の民主主義」で問題が解決できるという考えには、納得できませんでした。(私自身は行政当局の無責任さに辟易しており、生ごみ・コンポストは行政主導でなく一人一人の自覚と実践で進めていくのがいいと考えています。)
 この本は廃棄物問題の根本的問題だけでなく、農業を含めた未来イメージの解説にもなっていて、読んでいて考えさせられる点が多く、とっても良い本です。

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 ここで紹介した4冊の本はどれもお奨めです。でも4冊も買うのは大変、ということなら、私は1)か4)をお奨めします。ところで、この他にもたくさん参考になる本はあります。面白い本、これぞみんなに紹介したいという本がありましたら、その書評・推薦文とともに世話人の方までご連絡下さい。

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