ボーヌ Beaune その2

.Travel & Taste

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ボーヌ探索の2日目は中心街にあるオスピス・ド・ボーヌやワイン博物館を見学。また小型観光バス(ビジオトレイン)での旧市街巡りは、なかなか楽しい。ただ、街中の細い道をぐるぐる廻るので土地勘を掴むには至らず。

3日目は朝からボーヌ周囲に広がるワイン畑を足で散策。ここはコート・ド・ボーヌとかオー・コート・ド・ボーヌと呼ばれている処。ここにも是非行きたい場所がありました。レ・サンビーニョの畑がそれ。(写真はボーヌ西の小高い丘の上から眺めたワイン畑と旧市街)

私が今まで飲んだワインで、一番美味しく記憶に残るのはラ・ターシュ ’88。それ以外に、うまいっ!と感じたのは多々ありますけど、90年代初め頃に飲んだ中で良かったものにボーヌ・サンビーニョ があります。ネゴシアンものですがルモワスネ’78やルロワ’82を飲みました。これらは記憶に残るほど良かった。

grape2当時はシェ・ワダやヒラマツのワインリストに挙がっていましたが(私が飲んだのはワダさんとこ)、今でもリストアップされてるのでしょうか。販売店や通販ではほとんど見かけなくなりましたが、フランスでは健在です(当たり前といえば当たり前)。

そのレ・サンビーニョの畑を目指して朝9時過ぎにホテルを出発。iPhoneのマップでGPSオン。旧市街を離れて一路西へ。ボーヌ市民病院の駐車場を横切り、小綺麗な住宅地を抜け、10分も歩けば、そこはもうレ・サンビーニョのワイン畑。西側に向かって傾斜が高くなり、北側のペルナン・ベルジュレスやシャルルマーニュも視界に広がっています。ここがあのワインを作り出した畑なのか、としばし感激。ワイン好きでない方には理解してもらえない感情かもしれません。

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それから丘の上に登り、ブレッサンド、レ・グレーブと有名畑を抜け、畑の中の道を南下しながら道なりにゆっくりと下っていきました。途中、収穫作業のグループにいくつか遭遇。今年はブドウの生育が遅れており、ボーヌでは9月20日から収穫が始まったばかりとのこと。私が訪れたのは22日で、ブドウ畑にはたくさんの人たちが出て作業中。若い人もけっこう多く、一部はボーヌ版アグリツーリズムみたいな収穫作業もあるような感じです。

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ワイン畑はレ・グレーブ辺り。遙か彼方に見えるのはボーヌ市街地。けっこう高度差があります。
それにしても、急な勾配の畑で収穫するのは大変だなぁ。

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収穫されたピノ・ノワール。ブルゴーニュ赤ワインになる葡萄。実そのものは小さめ。

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こちらは白ワインの元になるシャルドネ。許可を得て1粒食べてみると、葡萄自体に甘さとコクがある。見た目は爽やかだが、触った指に粘っこさが残る程の糖度なのが印象的。

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ワイン畑の散策の次はシャトーやドメーヌ巡り。訪問したのは初日のノエラさん以外には、Bouchard Aîné & Fils、Château de Meursault, Château de Pommardの3つ。もっとたくさんのワインカーブやドメーヌを回りたかったんですが、アルコール分解能力や体力が追いつきません(残念)。まぁ今回はワイン買いではなく、食いしん坊三昧がメインなのでよしとしませう。

シャトーやドメーヌ訪問はそれぞれ10€前後の料金がかかりますが、ワインの説明や地下カーブの見学にワインの試飲がついています。試飲といっても村名ワインからグランクリュまでありますので、グラスワイン数杯分の値段と考えれば、10€は割安です。

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びっくりするのは、どこも立派な邸宅風の上屋の地下に広大なカーブが広がっていること! ちょっと地上からは想像できません。聞けば、ボーヌの街のいたる処の地下がこんな風になっているんだそうです。つまり、町全体がワインカーブ。まぁ最近は周辺にカーブを置いて、市街地のカーブは観光用にしているって話もあるみたいですけどね。

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びっくりといえば、Château de Meursault の館にあった絵画のコレクション。シャトーが昔から所有していたのか、それともシャトーを買収したパトリアッシュ社が持っていたのか、ビュフェの絵等が展示されていました。ちょっとした美術館ですね~。ワインカーブへ入る前に絵を見て楽しめるとは予想外で、じっくり時間をかけて絵画鑑賞しました。

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ところで、試飲の時、Château de Meursaultの1erクリュのムルソー2005#が予想以上に美味しかったので買おうか買うまいか考えていたら、シャトー担当者が試飲リストに載っていないワインをどこからか出してきてグラスにトクトクトク…。立ち上る圧倒的な香り、複雑な味わい、それに長いアフター。美味いブルゴーニュワインの特長を備えた逸品です。ラベルをみると、コルトンのグランクリュ2006#。

聞けば、そのシャトーがコルトンの小さな区画を2つ買収し、最近になって蔵出し始めたらしい。デキが良かったと云われる2005年はないのかと問うと、「2005はない。あったとしても15年はまだ飲めない。」とのこと。そりゃそうだろうけど、ホンマはまだセラーに置いておいて、たっぷり値が跳ね上がってから蔵出しするんじゃないのかなぁ(笑)。

まぁそれはさておき、試飲して良かったコルトン’06とムルソー’05を6本ずつ買い、日本へ送ってもらうことにしました。(ちょうど昨日通関会社から連絡があったのでもう数日で手元に届くことでしょう。楽しみです。)

#ここの1erクリュのムルソーはシャルム畑とペリエール畑のブレンド。コルトンもグランクリュ2つの畑のブレンド。

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昼間はワイン畑の散策やドメーヌのセラー巡り、夜は食事が楽しみです。ボーヌの2日目は既に紹介したラムロワーズでしたが、違うタイプのレストランにも行きたい。

ボーヌは観光地のせいか、レストランが非常に多いのですが、どこがリーズナブルで美味しいのか? 一見の観光客ではなく地元の人に人気があるのはどこか。そこで、ミシュランの登場です。当地フランス版は美味しい店なら☆なしでもちゃんと掲載されています。中でも、お薦めはミシュランマークつきですからわかりやすい(☆付レストランしか載せない日本版は、ミシュランの原則から外れているのでは?)。

最高級のレストランもいいけれど、軽く済ませたい時もある、家族連れで楽しみたい、あるいは、記念日や勝負日に使いたい、いろんなケースがあるはず。TPOに併せて選ぶなら、レストランだっていろいろある方が有り難い。そこで、ラムロワーズ以外に私たちが選んだのは、1つ☆の某店、元1つ☆のL’Eccusson、それにAuberge du Cheval Noir。

月曜日はボーヌの多くのレストランがお休みですが、Cheval Noirは開店しています。こういうのは有り難い。予約なしではダメかもと思いつつトライすると、マダムが機嫌良く入れてくれました(その後30分もしない内に満席。私たちはラッキーだった)。店内は明るく現代的な雰囲気で、デザインセンスに溢れ、テーブルクロスその他に工夫がいっぱい。見ているだけで楽しくなります。そして、ふだん使いの値段設定。マダムらのサービスも心地よくマル。

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Cheval Noir : ブレス産鶏肉料理、ポテトピューレ、茸、アスパラ添え
ブレス産を証明するメタルタグがついているのがご愛敬

二人でアラカルトから2皿づつ、白ワインのデミ(サントーバン)、デザート、コーヒー、ミネラルウォーターを注文し、合計で100€弱。この値段での満足感は高いですね。

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がっかりだったのは、某1つ☆レストラン。某3つ☆レストランのボーヌ分店でワインが売りというので、期待して出かけましたが、料理の味付けは濃くて大味。サービスももう一つ。ミシュランがここに☆をつけているのは納得できません。ワインリストには、料理内容とは不相応な3つ☆並みの値段がずらっと並んでいます。そして、地元ボーヌのワインは赤白1つずつしかアップされていません。地元の人からどう思われるのか、経営者は考えたことないのでしょうか。哀しいですね。

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一方、L’Eccussonは良かった。地元の人から「何故☆がはずれたのか」と思われているという話は満更ウソではないと思います。明るく綺麗な内装に丁寧かつ誠実なサービス、それに料理も美味。量がやや少なめなのが私たち夫婦には有り難い。

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L’Eccusson の1皿目、ヒメジのポワレ
シンプルだけど見た目に美しく、そして美味

私には少し塩味が強いかなと思う皿もありましたが、これは人それぞれ。一方、隣のテーブルで英語でしゃべっているグループは、お料理に塩や胡椒をパラパラふりかけまくり。米国人なのかな? 素材の味を生かすためにわざわざ薄味で調理しているシェフの気持ちがわからんのかね~。あのような客が多いと店側がいきおい塩味をきつくしそうなのがコワイわ。

L’Eccussonでは料理も美味しそうだし、少し値の張るワインを飲もうと勢い込んでいたのですが、ソムリエはそれを薦めません。うちの料理にはこれが良いと云い、ジャイエ・ジルの「オー・コート・ド・ニュイ 2002」(白)を提案してきました。

え、ニュイ? ジルさん、ニュイも作ってるの? ソムリエの答は「ウィ」。ジルさんのなら過去に何本も飲んできたし、間違いはないだろうけど、もう少し高めのワインでもいいかなぁ…というのがこちらの偽らざる気持ち。

「某有名ドメーヌのこれこれはどうかなぁ?」とワインリストを指さしながら聞くと、「高いのを頼まれるのは結構ですが、それがお料理に合うのかどうか私にはわかりません、いやきっと合うでしょう。でも、このジルさんのなら間違いありません。後はお客さん次第です。」とのこと。この言い分は面白い。

高いワインを売るのがイヤなのでしょうか。いやそんなことはないでしょう。あるいは在庫切れ? う~~~ん、わかりません。でも、フルボトルで46€ときわめてリーズナブルな地元ワインを提案してくれるのは、誠実で有り難い。そのワイン、実際にお食事によく合いましたから尚更です。やはり、ソムリエの話は傾聴すべし、という教訓をさらに強くした次第。

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残念なのは、平日の晩だったこともあり客の入りがもう一つだったこと。ちなみに、世界的なホテル&レストラン格付けサイトのtripadvisorでは、ここL’Eccussonがボーヌで2位、先のCheval Noirは4位、がっかりした某1つ☆レストランは20位にも入らない。ふ~~ん、普通の人の評価の方がミシュランよりも妥当ですね。J. Surowieckiの本を思い出します。

気になるお代は3皿コースメニュー、白ワインのフルボトル、エビアン、コーヒーで、170€弱(2人で)。ラムロワーズの約3分の1とはいえ、決して安いわけではありません。でも本格的なレストラン料理と美味しいワイン、それに気持ちよいサービスを堪能できました。もしボーヌにお寄りになる時にはご検討下さい。…こういう店に流行ってほしいという希望と期待を込めて。

さて、ボーヌでゆっくりした後またパリに戻り、最後の晩はランブロアジーへ。そこで私たち夫婦は今までで最も記憶に残る至高のディナーを味わうことになるのですが、それはこの次(続く)。