ボーヌ Beaune その1

.Travel & Taste

rTache2ボーヌ。地理的にも商業的にもブルゴーニュの真ん中に位置する街。到着した日に早速ワインツアーに参加。ボーヌ観光案内所を17時に出発。ヴォーヌ・ロマネからシャンベルタン辺りまでのツアーで、ワイン畑を巡り、どこかのドメーヌでワインの試飲付というもの。
このツアーの売りはロマネ・コンティのワイン畑の訪問。私としては憧れのラ・ターシュの畑が見れるかどうかの方が問題でしたが、その望みはかなえられました(写真がそれ)。オノボリさんと云われればその通り。でも嬉しいものはウレシイのだ。

ボーヌから北へ、ニュイ・サン・ジョルジュの街を抜けてヴオーヌ・ロマネ村へ。ルロワの前を通り過ぎ、その隣の隣のドメーヌ・ミッシェル・ノエラへ。

noellatノエラさんはアンリ・ジャイエの親戚筋で、ヴォーヌの老舗。マダム・ルロワがメゾンを立ち上げる時にも一肌脱いだという話を聞いたことがあります。不肖私も1本くらいは飲んだことあります。聞けば、ツアー当日は収穫前でどこも見学を受け入れてくれなかったけど、ノエラさんはどうぞという話だったそうです。ノエラさん、ありがとう。お会いしてみると、親分肌で頼もしいオヤジさんって感じ。

試飲は、ノエラさんが所有する畑ヴオーヌ・ロマネのレ・スショ’07やグランクリュのエシェゾー’07まで気前よく出して下さいました。どれもヴォーヌの、あの高貴で妖艶なピノ・ノワールの香り。飲んでみると、世間評価の高い(つまり値が高い)ワインはまだ若く、いったん眠りに入ったような感もあり、かえって値の安い村名ブレンドの方が飲みやすく、食事に合いそうでした。

気になる蔵出し価格は、2004~2007年の村名モノで30€前後、1erのレ・スショで40€前後、グランクリュのエシェゾー2007でも60€程度(2005は売り出しなし)。意外に安いですね~。日本にやってくると、この数倍(まぁ送料、関税その他を入れると仕方ないか)。うっかり買いそうになりましたが、まだ最初の最初なので様子見することに…。結局、後から考えると、この程度の値付けがこのあたりの相場でした。ノエラさんの蔵で買わなかったのを少し残念に思う今日今頃です。まぁ、ノエラさんのは日本でも買えるので安心といえば安心ですけどね。

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laTacheちょっとホロ酔い気分でノエラさんを後にし、ラ・ターシュの畑を見ながら、ラ・ターシュ通りを抜け、突き当たりを左へ。私はそれだけで一人悦に入りましたが、車はどんどん先へ。さらに道なりに進むと次の角からの畑が、あのロマネ・コンティ。世界最高の値段をつけるワインの畑ですが、畑自体は何の変哲もない普通の感じ。農薬を使っていないので雑草が生えているなぁくらいですが、最近の有名畑では皆クスリを使わず、せいぜい生物忌避剤を畑の周囲に置く程度だそうです。

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逆光で見えにくいのですが、石垣にロマネ・コンティと銘があります。腰高の石垣に囲まれていますが、畑土もブドウの木も素人目には普通の畑と何ら変わりがあるようには見えません。ブドウの実はまだ木に成ったまま。今年の収穫は天候の具合で10月の予定と聞きました。

毎年剪定するので、ワインの木はせいぜい腰の高さしかありません。案内のルルさんはボンサイを例に出して、剪定を説明。

一方で、根の深さは10メートルを超えるんだそうです。びっくりしますね~。フランスでは法律でワイン栽培での散水が禁止されていますので、ワインの木は水を求めて地中深く根を張るのだとか。それでワインの成長そして味わいに有利な石灰層とかに辿り着くというのがキモのようです。丘の傾き、形状、そして地層の内容、地下水の状況等々、地下の見えないところがワインのテロワールを決めているのでしょうね、きっと。

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ここらはコート・ドール、つまり「黄金丘陵」と呼ばれています。今まで大金を生み出すワインの丘だと思っていましたが、あにはからんや。夕日に映えるワイン畑をみると、ホンマに黄金に輝く丘ですねぇ。しばし、見とれてしまいました(写真はロマネ・コンティの畑)。

rConti2ロマネ・コンティを正面に右側の畑はリッシュブール、写真を撮っている私の背中側はロマネ・サンヴィヴァンですから、ワインセンサーが効く想像力豊かな人なら卒倒しそうな場所ですわ、ここは(爆笑)。一緒にやってきたワインツアー参加者8人で倒れた人はなかったけれど・・・・。

面白いことに、別の車でやって来たワインツアー客4人は、大きなワイングラスに赤ワインを注いで乾杯を始めました。いいねぇ。流行りそう。

連れ合いが彼らに「そのワインはロマネ・コンティ?」と問うと、「クロ・ド・ブジョー」とのこと。う~~ん、それ、私も飲ませてくれ~~。だって、畑見ているだけでワインが飲みたくなる処ですもんね、ここ。(写真はロマネ・コンティの畑にある十字架)

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ロマネ・コンティの次は、シャトー・ド・クロ・ブジョーを横目に、シャンボール・ミュイジニー、モレ・サンドニ、ジュブレ・シャンベルタン辺りまで北上。

途中、車中にて畑の名前を問うクイズに私が次々に正解を出したので、案内人も参加者達もびっくり。こちら、「ブルゴーニュワイン 地図と歩く、黄金丘陵」(山本博 柴田書店)を読んでいたし、さらにいえば、グーグルアースで予習までしてたんですから、当てて当たり前なんだけどね(笑)。

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Ch. de Cro Vouget ;クロ・ブジョーは19世紀後半のフィロセキラ被害の後荒廃し、外国人に買い取られそうになりました。その時に多くの人が協力して畑を守ったのですが、そのおかげで所有者が沢山できて、その後の相続や転売などで現在百以上の細かい区画に分割されているらしい。その結果、ワインの畑としてはどれが良いのかシロウト目にはわかりにくくなってしまいました。お買いになる時は要注意とのアドバイスあり。

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Musigy ;「神の雫」で一番最初に登場するのがここのレザムルーズ。「神の雫」はフランスでもけっこう人気だそうです。ちなみに案内人のルルさんはこちらのワインが一番好きらしい。なぜかといえば「女性的で複雑だから」。でも、その説明で笑いがとれなかったのを残念がっていました。

ああ、来て良かった。ホンマに。地理的な感覚はワインに対する愛着を深め、おまけにクロ・クリマの位置まで把握できると飲む時の美味しさがさらに増すことでしょう(蘊蓄のネタにもなるし)。ワインフリークにはこの上なく楽しい楽しい一時で、得難い体験でした。