八百長恐慌

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八百長恐慌! 「サブプライム=国際ネズミ講」を仕掛けたのは誰だ鬼塚英昭さん曰く、今回のサブプライムローンに伴う不況は八百長だとのこと。根拠は至極簡単。金融機関の大損を公金で補填しながら、一方でオフバランスされている巨額の儲けが隠されているから…というもの。彼の言い分は当たっていると私も思います。そして、これもまたメディアが伝えない話。

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世の中には陰謀論でヒトを欺く人たちがいます。ユダヤだどうだこうだとか、やれフリーメーソンが云々、何とかスカルズが…とか、そういった類の話のこと。何のためにヨタ話をするのか知りませんが、真に受けているとトンデモナイ判断ミスを犯すでしょう。でも、陰謀論と陰謀は違います。

世の中は善男善女の集まりで、皆が自由に幸せになるように生きているなんて考えるヒトはいないでしょう? むしろ、権力を持った人たちが社会を動かしていると考えるのが当たり前。身近なところでは選挙だってそう。お金や票を持った人たちが自らの意を汲む者を代議士にする制度ですからね。

あるいは、誰が米国大統領に影響力を与えているのか、あるいは金のようなモノの値段を動かしているは誰なのか。そんなことを考えてみるのも一興です。社会は決して個人個人の自由意志で決まっているのではありません。民主主義はそれらしく見せかけているだけ。そういう権力の意向を陰謀というのであれば、この世の中は陰謀だらけではないかと私は常々思っています。

脱線しました。鬼塚さんの本の話。

著者の持ち出すキーワードは、SIVによるオフバランス化、これに尽きます。勘の良い人ならこれだけで十分かもしれません。

Structured Investment Vehicle、略してSIV、邦訳なら特別目的会社。エンロン事件の時、会計を簿外に飛ばしてイカサマを行ったため、それ以降米国では簿外会計を禁じました。でも、「特別な目的」がある場合は例外的にオッケイ、それがSIV。FRBもSEC(米国証券取引委員会)もタッチできません。現在、大企業や大手ファンドはほとんどがこの制度を悪用し、会計内容をわからないようにしていると云ってもまぁ過言ではありません。

で、サブプライムローン事件で何が起こったのか? 問題の発覚で株価や債券価格が暴落した結果、レバレッジをかけてきた資産投機が破綻し、大赤字となった投資家や企業は少なくありません。これはその通り。だけど、その直前まで暴利を貪ってきた金融機関の利益はどこに消えたのでしょうか? 

暴落で泡と消え去った? そんなバカな。デマに惑わされてはいけません。暴利はオフバランスのSIVを通じてどこかに隠されたはず、これが著者の言い分。う〜〜〜ん、当たっていそうだなぁ。

でも、これはどうしたら確認できるんでしょうか。SIV会計は報告義務もなし、当局の監視下にもない。大赤字を被った分の方は、リーマン倒産とかGM破綻のように表に出てきましたが、それまでいくら儲けてきたのか、それは外部の者には全くわからない。ただ、CEOの超巨額報酬が成功報酬だとすると儲けも相当なものだし、それは赤字の前に現金化されたり、別の場所に移されているはずですが、SIVで飛ばされてしまうと誰にも追跡もできません。

著者曰く、隠されたお金はほとぼりが覚めるまでじっとどこかに潜んだまま。サブプライム問題は初めからイカサマだったというわけです。また、こういうストーリーを考えたのはゴールドマンサックスら金融資本家連中であるとのことですが、さもありなん。

この本の推測は追跡できないが故に「陰謀論」と同等に扱われるのかもしれません。でも、誰にも追跡できない儲けの隠し場所という仕組みを作った当局の責任こそ、本来問題にされるべきだと私は考えます(きっぱり)。さてさて真相は? 私は鬼塚説に1票です。

蛇足ながら、昨年紹介した米国債事件を思い出して下さい。ある財団法人の日本人2名が13兆円の米国債をイタリアからスイスへ持ちだそうとしてイタリア警察に捕まった事件です。日本のメディアではその「犯人」については触れず、事件そのものをウヤムヤにしました。13兆円ですよ! ホンモノか偽物なのかはわかりませんが、見事に「なかったこと」にしたのは日本のメディアがアンタッチャブルな権力と連んでいる証拠でしょう。