黒川温泉で温泉三昧

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いつか一度は行きたいと思う温泉地がいくつか。そのうちの1つの黒川温泉に先日やっと出かけてきました。九州のど真ん中の黒川温泉には七つの泉質があり、「湯めぐり」でどの宿の湯も楽しめるのがマル。泊まった旅館の温泉やお料理も素晴らしく、また行きたいと思わせる場所でした。

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今まで縁がなかったのは関西から行くのに時間がかかったため。別府や湯布院はJRや空港からのアクセスが良いので何度か訪れたことがありましたが、黒川温泉はアクセスが良くなく、短い旅程では厳しい。レンタカーを使うにしても一般道では時間がかかった。ところがいつにまにか九州管内に高速道路網が整備され、博多駅から黒川温泉までレンタカーで二時間前後で辿りつけることがわかり、それなら行程範囲じゃないか、と考えた次第です。

九州生まれで九州育ちの私ですが、50年前に九州で温泉といえば別府(今でもそう)。湯布院の名前が出てくるのは1980年代後半から。ちなみに日田付近で温泉といえば杖立温泉で、黒川温泉の名前を聞いたことはありませんでした。

その黒川温泉が広く知られるようになったのは90年代のこと。詳細はネットで調べてもらうとして、売り出し文句は「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」。つまり、数十軒の宿がいっしょになって黒川温泉を盛り立てていこうと考えた先駆者がいたのです。

その一例が入湯手形。黒川温泉には7つの泉質があるそうですが、手形1枚で宿泊以外の宿の温泉を三箇所楽しむことができます。また、今年7月からはその手形でお店の食べ物や土産物も買えるようにヴァージョンアップされ、宿だけでなくお店も運命共同体というのが明確になりました。

湯めぐり手形で三箇所の温泉が楽しめます。7月から1つはお店の飲み物や食べ物にすることも可能になりました。

そういう温泉地ですが、こちらの好みはコバコで大手ツアー会社にはあまり出てこない処。ということで、20を超える宿のうち、団体旅行対応の宿を外しました。温泉にゆっくり浸かり、美味しい食事を楽しみたいからですが、まぁ選択基準はヒトそれぞれ。

また、雑誌などで露出が多い宿は(新しいのでない限り)警戒しました。だいたい人気があってリピーターが多い宿なら新規客の開拓は控え目。雑誌などに何度も出てくるのは要するに一見さんの呼び込み宣伝の類で、宿であれレストランであれ、コンサルタントやコーディネーター絡みである場合が多いです(いつも雑誌に名前が出てくるHリゾートなど)。

そんなこんなで2つ3つに候補を絞り、今回選んだのは黒川荘。先の手形で三箇所の温泉巡りも楽しみました。今回は二泊とも同じ宿にしましたが、転泊と称して1泊目と2泊目を別の旅館にすることもできるのが黒川温泉の特長です(2泊目の宿へ荷物を移動してもらえるサービスあり)。面白い試みですね〜。

黒川荘にて焼酎3種飲み比べ。森伊蔵はマイルド、村尾はドライな感じがよくわかりました。ちなみに私は赤霧派。

ところで、最近の温泉旅館やレストランはアノニマスな傾向があるので要注意。どこも似たり寄ったりの「金太郎飴」的な設えや料理では出かける価値が薄くなってしまいます。温泉なら源泉掛け流し、お食事なら地産地消はローカルな宿の基本だと思うのですが、なかなかそうは問屋が卸さない。結局、決め手は宿のおもてなしとこちらとの相性の良さ。他所にないユニークさがあれば言うことなし。

そういう意味では黒川荘のお料理は期待以上に美味しく、仲居さんのレベルも高く、温泉も抜群。近くだったら二~三ヶ月に一度は行きたいくらいのところですが、関西から遠いのが難点です。外国人いっぱいの温泉地や外部資本に翻弄されてしまった観のある処に比べると、森に囲まれた黒川温泉の緩さというか長閑さは素晴らしいと思った今回の旅行でした。

7月2日の黒川荘の八寸

(追記)黒川荘は1990年に崔本建設(日田市)が温泉付別荘として売り出す予定で熊本観光ホテルから買収したのが発端。でも、自然の良さを考慮し温泉宿を建造。団体旅行がまだ主流だった時代に客室数を抑えた旅館づくりが当たり、黒川温泉が全国区になるのとともに現在に至っています。2016年の熊本地震で湯殿が被災しましたが1年後には復活。温泉激戦区の九州のせいか関西や関東に比べると割安感あり。ただ黒川温泉には他にも面白そうな宿がたくさんで、旅人を悩ませます(笑)。