シンガポールからみえてくる今後 あるいはワクチン未接種者を待ち受けるもの

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シンガポールで新型コロナ感染者が急増中。ワクチン接種が進み、夏頃までにほとんど消えていたのが何故今頃になって増えてきたのか。反ワクチン論者はワクチン接種は効果なしと喧伝しますが、シンガポール政府の統計をみると真相はその逆。ワクチン接種の効果が大きいことが統計で明らかになり、早速、同政府は未接種者の出社禁止を打ち出しました。ワクチン未接種者に厄介な未来が待ち受けているのは間違いなさそうです。

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出典はロイター

新型コロナをめぐる話が新聞テレビそしてネットを賑わせています。全てが正確で的確であれば良いのですが、内容は玉石混交なので現状把握や今後の見通しが難しい。ワクチン接種をめぐる話もその1つ。

シンガポールは新型コロナワクチンの接種率が84%以上、世界でも接種が進んだ国の1つです。
ところが、その国の感染者がここ最近うなぎ登り。現在新規感染者は1日に3000人を超え、死者数も1日に10人を超えてきました。

左図からわかるように、今年の夏頃まではほとんど感染者も死者もいなかったのがいったい何故こんなことになったのか。

この動向をみて、「ワクチン接種では感染は防げない、効果なし」というコメントをネットで散見しますが、本当にそうなのでしょうか。シンガポール政府の統計をみると全く逆の景色が見えてきます。なお、以下の図表は同政府のデータから採りました。

 

最新の情報によると(Update On Local Covid-19 Situation (24 Oct 2021))、直近28日間に感染した人(84,581人)のうち、無症状か軽症が98.6%、酸素吸入を受けた者が0.9%、ICUでの治療を要した重症者が0.4%、また死亡者は173人(これまでの死者総数は約300人)。年齢別にみると重症患者の多くは60歳以上の高齢者となっています。

また、酸素吸入やICUに入院した患者のうち46.2%がワクチン接種完了者、 53.8%がワクチン未接種者か未完了者とのこと。

でも、この数字をみて、ワクチンに効果なしと考えるのは間違い。シンガポールでのワクチン接種率(2回完了者)が84%ということは、接種完了者が未接種者や未完了者の約5倍いる、ということ。ワクチンに効果がなければ、酸素吸入やICU入院を要する患者も接種完了者が未接種者等の約5倍いるはずですが、それより明らかに少ない。

また、ワクチン未接種者では新型コロナの重症化率8.1%、死亡率1.4%。でも、接種完了者ではそれぞれ1.4%と0.12%と明らかに少なくなっています。シンガポールのワクチン未接種者の死亡率は世界的な(ワクチン以前の)平均値と同程度、一方ワクチン接種完了者についてはかなり低くなっていることがわかります。ワクチンを接種したからといって全く安心という訳にはいきませんが、確実に効果ありとみてよいでしょう。

 

以上のことから考えると、シンガポールではワクチン接種で重症化や死亡を減らしているものの、経済再開で社会活動が活発化し、ワクチン未接種者を中心に新たな感染が広がっていることが、昨今の感染急拡大の背景にあると考えられます。

シンガポール政府も同じ見解の元に(しているかどうか不明ですが)、先週23日、「ワクチン接種を受けていない従業員の出社を来年1月1日から禁止すると発表」しました。

市民の中には強要だと反発する意見もあるようですが、先の統計をみるなら、未接種者が重症化し医療サービスを圧迫させているのは明らか。そういうグループの人たちの行動制限こそ感染対策の1つだとシンガポール政府は考えているのでしょう。

ワクチン接種の効果は最大でも95%程度と製薬企業から報告されています。ウイルスが市中にウヨウヨでは、ワクチン接種だけで感染を防げるわけではありません。経済を再開すれば尚更。アナフィラキシーでワクチンが打てないという人はともかく、ゼロリスク指向や勝手な思い込みでワクチン接種を拒んでいると明日の命運は如何。シンガポールの感染急拡大を他山の石とし、日本では緊張感を緩めず、ワクチン接種の推進とマスクの徹底等で感染拡大が起こらないように注意すべきところです。