無駄を生み出す燃料電池(燃料電池その1)

.opinion

東京ガスや大阪ガスが近々家庭用燃料電池を販売開始するというニュースが流れています。とうとうこういう日が来たのかと歓迎したいところですが、どうも素直に喜べません。期待していたものとはかなり異なるからです。そして、メディアは私が危惧するような問題点について全く触れません。

  ☆  ☆  ☆  

話題になっている家庭用燃料電池システムとは、都市ガスをエネルギー源として電気を作り出し(発電)、その廃熱でお湯を沸かし(給湯)、家庭のエネルギーとして活用しようというもの。でも、そうは問屋が卸しません。

まずお湯を沸かしても、使えるのは貯めるタンクの量まで、です。タンクが満杯になったら、いくらシステムを動かしても無駄なお湯を作るだけ。システムを止めてしまうと東電なり関電から商用電力を買うことになります。つまり、エネルギー源はガスだけでは完結しない。

電気の使用は夜間に多いこと、お湯の用途も同じく夜間に偏る家庭がほとんどであることを考慮すると、燃料電池も夜間のシステム利用が当たり前となります。したがって、電灯などの電力需要を満たしながら給湯を確保しようとすることになり、発電量を優先するのか、それともお湯の量を第一にするのか、その最適解を要求されます。

実際、そういう上手い解決方法に辿り着く前に、電気も欲しい・お湯も欲しいという世俗的な欲求を満たすため、結局、電気もガスも大量消費。その上、余ったお湯は深夜から朝までに冷えてしまい、そのままでは使えなくなるということにもなりかねない。要するに無駄を作るシステムになりそうです。

もしソーラー発電のように燃料電池で作った電気のうち、余った分を商用側に逆潮流させることができるなら(売電)、少なくとも電気の無駄はなくなります。でも、残念ながら電力会社は現在それを認めていません。表向きには技術的問題と説明するでしょうけど、本音は別で、おそらくオール電化と燃料電池の鬩ぎ合いが背後にあるのでしょう。

電気の余剰分が売れない限り、燃料電池システムは家庭で使う電力以下の発電しかできません(余分に発電しても使えないので無駄)。日によって、システム能力を超える需要が出てくれば、その時は商用電力で補うしかありません。ここにも、ガスだけでは成立できない欠点が見えてきます。

  ☆  ☆  ☆  

お湯の方はどうか? お湯はタンクに貯められる量までの使用が前提となります。でも、考えてみて下さい。日々のお湯使用量が決まった範囲にきちっと入るという家庭はどれほどなのでしょうか。日によってはたくさんのお湯が要るということもあるでしょう。その時には新たにガスを使ってお湯を沸かすことになり、また余剰分が生み出されてしまう可能性があります。

エネルギー源であるガス代の高さも無視できません。電気が給湯時の発電ですべて賄えるなら万々歳ですが、それだけでは無理。お湯は以前のガス代と同じ程度にはかかるでしょう(必要なお湯量は変わらないから)。したがって、電気が商用電力だけのケースよりもどれほど安くできるかということになりますが、これは電気の使用実態に大きく影響されます。コスト的にもエネルギー資源的にも節約になっているのかどうか、ケースバイケース。やってみないとわからない。

メディアで登場する例をみていると、ガス使用量が月3万円超の家庭を取り上げ、それが安くなったようなならないような話ばかり。そんな大量消費家庭をとりあげて、はたしてそれが実用的なのかどうか、大きな疑問です。

さらにソーラー発電を既に導入している場合はどうなるか? ここにも大きな問題がまた潜んでいますが、それは次の機会に。(2009年2月第一稿)