電気を売れない燃料電池(燃料電池その2)

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最近販売開始がアナウンスされた燃料電池システム批判の2段目。エコな燃料電池がなぜ無駄なのか?それは現行システムの制度的な問題が背後に潜んでいます。

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大阪ガスのHPを見ると、「W発電でエコ」などと称して、太陽光発電といっしょに燃料電池システムを使うことで「さらに多くの太陽光発電の売電を実現」とうたっています。太陽光だけでなく燃料電池とのダブルで発電しようというなら誰でもわかりますが、「さらに多くの・・・」とは何か? この文句は一種のマヤカシのようなもので、ここに前回指摘した問題点が潜んでいます。

まず、東京ガスや大阪ガスが売り出す燃料電池システムでは作った電気を売ることができません。せっかく作っても売れないのですから自家消費するしかない。そこで、売れる方のソーラー発電の電気をたくさん売って下さいというわけ。その結果「さらに多くの太陽光発電の売電を実現」となるのでしょう。でも、ソーラー発電の能力や効率が改善されるわけではありません。実に紛らわしい。

一方、ソーラー電力を全部売ることができても自家消費電力に相当する分のお湯がでてきます。これを昼間全部使えるのでしょうか。貯湯して夕方や夜間に使えばいいじゃないかと思うかもしれませんが、夜間にはガス発電による電気が要るので燃料電池システムを動かさなければならなくなります。その時、夜間に要る電気の多寡によってお湯の量も上下します。これでは必要量を確保するというより、多め多めにお湯や電気を作るシステムになってしまいます。

大阪ガスでは「太陽光発電だけつけるときより売電量が多くなります」と説明します。その通り。だって、燃料電池でも電気を作るので、その分余計に売れるから。

でも、昼間の電気使用量は夜間に比してかなり少ないし、ソーラー発電の能力は昼間ではなく1日を通じた必要量に応じて決めるのが普通なので、昼間の自家消費分はかなり少ないのが一般的。その「少ない電気」をわざわざガス発電で作るとしたら、その燃料費は高く電気代は高くつきます。W発電でコストは高い、というのでは笑えません。実用になれば、このマヤカシのような話はすぐにばれるでしょう(苦笑)。

この問題は燃料電池システムで作った電気を電力会社が買い取らないことに起因しています。ソーラー発電でできた電気は問題なく逆潮流できるのですから技術的には問題なし。電力会社のオール電化推進と軋轢を起こすために買い取りをしたくないということなのでしょうか。だとしたら、電力会社とガス会社の利権争いのせいで、せっかくの燃料電池が浮かばれません。

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無駄を作るといえば、現行の燃料電池システムの中には、エネルギー使用量を節約しようという意気込みを満足させる「仕組み」や「遊び」がないことも気になります。これはソーラー発電にも通じる話ですが、システムの導入が、省エネ欲求なりエコ感覚をとりあえず充足させてしまうことの本質的な問題点。少しわかりやすく云いましょう。

普通の家庭なら電気のオンオフを励行したり、待機電力を減らすと即エネルギー使用量を減らせます。つまり行為と効果の因果関係がわかりやすい。だから、やる気もでるし継続の可能性も高くなります。継続したい気持ちも出てくるでしょう。

一方、燃料電池のような複雑なシステムでは、初期投資に資金を費やしてしまうと後は個人の工夫でどうのこうのというレベルではなくなり、日々エネルギー使用を考え減らしてしこうという努力の芽を摘んでしまいかねません。

もちろん、どんなシステムを採用しようと見識の高い例外的な人はいるでしょう。でも、快適性を優先してしまうと、結局はエネルギー大量消費型の生活を脱却できません。いくら有用なシステムでも導入しただけで省エネいや小エネにはなりにくい、ということ。

今私たちに求められているのは、限りある資源をいかに大切に使っていくか、日々の快適性と地球資源の保護保全との間とのバランスを個々人がどう認識し実践していくのか、この辺が大切なところ。この方向性が見えるシステムなのかどうか。どんな立派なシステムでも、その使い方を私たちが学び取らないと、導入しただけでエコなどと錯覚する「おもちゃ」になるだけでしょう。そして、そういった販売方法の「おもちゃ」が蔓延ると、いったいどういう結果を招くのか、私には暗い見通ししか出てきません。

で、私の結論;

現行の燃料電池システムには問題あり。
少なくとも売電できるように制度的に改善することが先決。

個人的には、早くコンパクトな水素発生装置や実用的な水素や電気の貯留装置が市販されるのを強く期待しています。そうすれば、縄張り争うガス会社や電力会社を超え、燃料電池システムとソーラー発電システムとを融合させられますから。