新型コロナ抗体検査に早く保険適用を!

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先日来、新型コロナウイルスの抗体検査を話題にしてきましたが、検査といっても精度がいろいろで玉石混交なのは指摘してきた通り。そんな中、米国FDAが5月13日、新型コロナウイルス感染症の抗体検査の調査結果を公表。その結果からみると、精度が良いのは3種類。厚労省もいろいろ検討しているのでしょうが、喫緊の状況でわざわざ独自性を発揮する必要はなし。米国FDAの報告を参考にして、精度の高い抗体検査を「即刻認可」してほしいものです。

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抗体検査は、過去にウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる検査です。今回の新型コロナウイルスについては未だよくわからない点が多いのですが、過去に感染していれば免疫ができているという考え方を現時点では採用しています。問題は抗体をどう検知するのかということ。

米国FDA(食品医薬品局)は5月13日、新型コロナウイルス感染症の抗体検査について11社・13種類の調査結果を公表しました。その抗体検査13種類のうち、特に素晴らしい結果を示したのは3種類。詳細はFDAの報告を読んでいただくとして、素晴らしいのは下記の企業の製品です。現在米国ではいろいろな検査が緊急認可(EUA)されていますが、精度の違いが明らかになってくると今後は優れたものだけに淘汰されていくものと予想されます。

<1> Ortho-Clinical Diagnostics

この会社の2種類の抗体検査のうちの1つは、感度100%、特異度100%、有病率5%の場合の陽性的中率100%、陰性的中率100%という素晴らしい結果でした。この検査はVITROS Immunodiagnostic Products Anti-SARS-CoV-2 Total Reagent Pack and Calibratorという名称で、IgG抗体・IgM抗体・IgA抗体を一挙に測定して判断するという検査です。既に4月25日に米国FDAの緊急認可(EUA)を受けて米国内で発売しており、日本では5月下旬の発売を目指しているとのこと(でも、研究用試薬としての発売で「保険適用としての認可」は先かもしれません)。

<2> Roche

この社の抗体検査はIgG抗体とIgM抗体を測定し、感度100%、特異度99.8%、有病率5%の場合の陽性的中率96.5%、陰性的中率100%とのこと。先日記したように、会社トップが「他の製品は使い物にならない」と自負していたのは多分に宣伝込みですが、Roche社の抗体検査が優秀なのは間違いなさそうです。ちなみに、Roche社は日本で5月13日から研究用試薬としての販売を開始し、5月中に厚生労働省へ製造販売承認を申請して保険適用を目指すとのことです。

<3> Abbott

この社の2種類の抗体検査のうちの1つ、Architect SARS-CoV-2 IgGは、感度100%、特異度99.6%、有病率5%の場合の陽性的中率92.9%、陰性的中率100%。Abbott社は5月8日に研究用試薬として日本での発売を開始し、早期に厚生労働省へ製造販売承認を申請して保険適用を目指すとのことです。

一方、日本の厚労省が新型コロナウイルス感染症の抗体検査として『保険適用』しているものは現時点でありません。『保険適用』がないと医療現場では保険診療で検査できません。検査だけ使えばいいのではないかと思う人もいるでしょうが、日本では厚労省が『混合診療を禁止』しているため、「自費」で何かを検査をすると保険適用されている他の検査・処置・処方・点滴も全て『自費』になってしまうシステムになっているため実質上使えません。

したがって、日本で何か検査を行うためには、厚労省がその検査を認可することが必要なのです。本来なら、厚労省独自の判断基準で認可するかどうかを決めたいのでしょうが、4月に検討中としてから早1ヶ月動きがありません。緊張感がないのか、それとも利権調整に手間取っているのか不明ですが、感染状況の把握と経済再開を打ち出すのなら米国FDAの調査結果を参考として早々に「緊急認可」してほしいと強く願うところです。