死亡者数の違いはBCG接種の有無か?

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COVID-19、ヨーロッパや米国での感染拡大が凄まじい毎日。ところが日本の死亡者数は各国に比べてかなり少なく、各国から不思議に思われています。この点が気になって数週間前からいろいろ考えてきましたが、これだという決め手に行き当たりません。でも、数日前から出てきた報道の中にヒントになりそうなものが1つ。過去に受けたBCG接種が新型コロナに効いているのかもしれないという話です。以下に記すことは、思いつきだけで科学的裏付けはありません(念のため)。
(追記)内容に鑑み、英語でも書いてみました(次稿)。スピード優先なので文体語彙スペルに問題があるのはご勘弁。

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世界では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数そして死亡者数がうなぎ登り。米国では死亡者が3170人、イアリアでは11591人、スペイン8189人、フランスでも3031人など、悲惨で深刻な状況です(3月31日現在)。

一方で死亡者数の少ない国もあります。ヨーロッパではポルトガルやドイツなどがそうです。また、私たちの日本も56人ときわめて少なく、各国から統計がおかしいのではないか、何か隠しているのではないかと訝しがる声も出ている位です。

この違いはいったいどこから来ているのか。感染の広がりについては、各国の生活習慣の違い(チークやハグ、キスなど)で接触感染の度合いが違うということが考えられますし、死亡者数の違いは医療設備をはじめとする医療サービスの充実度が関係しているものと考えられます。でも、果たしてそれだけなのか。何か別の要因があるとしたら、それはいったい何か?

そんなことを考えていると、一昨日のニュースで「BCG接種で重症化リスクを減らせるかもしれない」というのを知りました。米ハーバード大学公衆衛生学部のメガン・マリー教授は「BCGワクチン接種が新型コロナウイルス感染症に対して効果があるか試す価値はある」と呼びかけているとのこと。

また、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之教授は、黄熱病のケースを引きながら「BCG投与により結核とは関係のない病原体に対しても実は免疫力が強化されていることが示唆」されたとしています(オフターゲット)。要するに、BCGワクチン接種で新型コロナの重症化をある程度減らせるかもしれないということ。また、昨日のニュースウィーク誌の松岡由希子氏の記事はわかりやすく、この辺の事情を紹介していました。

BCG接種で新型コロナウイルスに対抗できるのなら、過去にBCG接種を受けた場合はどうなのでしょうか。最初は半信半疑でしたが調べてみると、死亡者数の多い国は現在BCG接種を全く行っていないか、極めて接種率の低い国が多いことがわかりました。死亡者の多いイタリアやフランスでは現在のBCG接種は0%で、米国の接種率も極めて低い。一方、日本やポルトガルのようなBCG接種が当たり前の国では死亡者が少ないのです(ただし、イランなどの例外あり)。

各国のBCG接種状況はこちらへ。知りたい国をクリックするとそれぞれの接種実態がわかります。

日本でBCG接種が法制化されたのは戦後の1949年。これ以降は国民全部が接種を受けていることに建前上はなっています。当時、学校の生徒でツベルクリン反応陰性ならBCG接種を受けたでしょうが、学校以外の場所で当時の大人がどこまで受けたのでしょうか。当時小学生だった世代以降、つまり現在80才未満の人でツベルクリン反応陰性だった人はBCG接種を受けたでしょうが、それ以上の年令の人がどの程度受けているかは曖昧です。

つまり、日本でも80歳以上の高齢者はBCG接種を受けていない人が多く、仮にBCG接種を受けていたとしても、その効果は年齢とともに薄れてしまいます。これが日本において80歳代以上の高齢者の方々に死亡者が多い一因かもしれません。

一方、ヨーロッパなどの他国ではどうか。多くの国では数十年前まではBCG接種を行っていましたが、若い世代はBCG接種を受けていません。また、高齢者は昔受けたBCG接種による免疫が既に下がっているかもしれません。そう考えると、日本と異なり、全世代に災禍が及んでいる理由が説明できます。

さらに興味深いことに、BCGワクチンは国によって使用している「BCG株」が異なります。日本は「Tokyo 172-1株」を使用していますが、この株はWHO国際参照試薬BCGの力価で他の株より力価が高い。日本と同じ株を使用している国が世界にもいくつかありますが、それらの国の新型コロナウイルス感染状況がどうなっているのか、気になるところ。

きちんと各国のBCG接種状況をチェックしなければ議論を深めることはできませんが、もしBCG接種が重症化を食い止め、若い世代での感染の広がりを抑制しているのなら、日本の死亡者数の少なさはBCG接種のオフターゲット(目的外)効果ということになります。現在、日本ではほとんどの0才児がBCG接種を受けているので、日本で0才〜9才の感染者や重症者の報告が少ないのかもしれません。各国の死亡者数の違いもBCG接種状況で説明できるかもしれないと考える次第。

もしこれが当たっているなら、新型コロナウイルス感染症に罹って重症化した人・軽症だった人・無症状な人で、ツベルクリン反応に差が出るのかどうかもチェックすべきところ。そして、ツベルクリン反応検査で陰性の人(あるいは陰性の人と強陽性でない陽性の人)で同意が得られる場合はBCG接種、という方法が考えられます。あるいは感染リスクの高い医療従事者でまず試行し、副反応の程度を調べてみるという方法もありそうです。

新型コロナウイルスに対する本格的なワクチンを作るのにはどうしても月日がかかります。それまでの暫定的対策としてBCG接種にトライしてみる価値はあるのかもしれないと思う次第です。

・・・と書いてきて、私が関心を持つくらいだから目端の利くヨーロッパや米国の研究者は既に効果の具合を確認すべく取り組んでいることでしょう。数日中に何らかの進展が上がってくるのではないでしょうか。