中国では本当にピークアウトしたのか?
2020/03/01
改めて新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数について。新聞テレビでは感染者数は8万人以上(世界)と云いますが、ほとんどが中国本土での数字。おまけにこの数字は累積数で、現在の感染者数ではありません。一方で中国では既にピークアウトしたので、また海外に行こうというのか4月以降の旅客便検索が中国では急増しているらしい。実態はどないなことになっているのでしょうか。今回は感染者数について。
(注記)この場合のピークアウトとは感染患者数が頂点(ピーク)に達し、その後は増えない状況。数字的には新規感染者数が新規の回復者数+死亡数と同数以下。
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新型コロナウイルスに感染した人数はいったいどれほどいるのか。メディアでは8万人〜の数字を挙げていますが、これは累積の感染者数なので、回復した者と死亡数を累積数から差し引いたものが現在の感染者数となります。
米国のジョンズ・ホプキンス大学のCSSEが今回のCOVID-19感染数について随時まとめていますが、その数字によると、現在中国本土で79,822人、死亡者は約2900人、回復した人数は約42000人。とすると現在の感染者は中国本土では34,733人で、既に4万人を切っています。ちなみに、表中の圧倒的な死亡者数のHubeiとは湖北省の英語名です。(数字は刻々と変わりますから最新のはクリックしてオリジナルを参照して下さい)
ちなみに同じデータからひふみ投信の三宅一弘氏(経済調査室長)が2月28日にまとめたものを見ると、感染者の推移がよくわかり、中国での感染拡大がピークアウトしたような感じになっています。
そのせいでしょうか、中国のあるオンライン旅行代理店では「2月第3週の国内ホテル予約は20%余り伸び、一部の予約は4-6月分の宿泊となっており、4月以降の旅行を計画し始めている」とのこと。えらく反応が早いですね。
でも一方で、中国本土の感染者数には大きな問題あり。というのも、ウイルス検査で陽性でも症状が出ていない者は感染者数にはカウントせず、感染者とは見做していないのです。
この統計では問題ありという世界的な批判の中で、中国では既に感染者数の定義を繰り返し変更。たとえば、2月12日にはたった1日で感染者が1万5千人増えていますが、これはPCR検査は出来ていないけれど臨床的に新型コロナウイルス肺炎と診断されている患者さん達を加えたために急増したらしい(武漢市などではPCR検査が充分には出来ないため検査を受けられていないが、胸部CTスキャンなどで新型コロナウイルス肺炎と臨床診断されている人が沢山いるとのこと)。でも、臨床診断では新型コロナ以外の肺炎も紛れこむ可能性があるという理由で、2日後には臨床判断での診断例は除かれました。現在、中国ではウイルス検査で陽性で症状のある者を感染者としており、症状があっても検査が出来ていない場合は「感染者」にカウントしていません。
日本では当初からPCR検査に様々なハードルを設けて、なるべくウイルス検査をしないということで感染者数を抑えてきました(大阪府の例など)。今後はPCR検査のハードルを下げる可能性があるものの、現時点でのハードルは高いままです。中国も日本も症状が顕在化しなければオッケイというギャンブル的判断が功を奏するのかどうか(皮肉)、今後が心配です。
最後にもう1つ。中国での感染者数が減れば、いずれ中国からの団体旅行が解禁され、再び大勢が世界中へ押し掛けることになるでしょう(現在、中国は団体旅行を禁止し、個人旅行だけ行われています)。その中には先の統計からも明らかなように、症状は出ていないか軽いけれど新型コロナウイルスに感染している旅行者がきっといるはずです。
今夏のオリンピックが開催されるのかどうか、不透明な状況ですが、開催されたら世界中からたくさんの人がやってきます。夏までに世界的流行が落ち着いているのかどうか。国内の市中感染が日常事になってきた昨今、かなり気になるところです。