CoV nCoV COVID-19

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ご存じ、最近毎日報じられるコロナウイルス(Corona VirusでCoV)。2003年のSARS(中国)、2012年のMERS(サウジアラビア)もコロナウイルスでしたが、今回は違うタイプが登場したので、NovelのnをつけてnCoV。昨年末に中国で見つかったため、2019の19もつけて COVID-19というのが公式名となっています。いったいどないな展開になるんでしょうか? 追記:SERSではなくSARSでした(ご免)

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先週米国の友人から電話があり、今春来日するのを取り止めたとのこと。日本に来ることはできても米国へ帰るのが難しくなっているから、というのが理由でした。

米国では中国全土を感染地域と認定し、そこから来る中国人を入国拒否しているのはご存知の方も多いはず(一方、日本では、中国の湖北省と浙江省に滞在歴のある場合の申告だけです)。現在の日本の厚労省の対応のまずさは米国内でも報じられています。そうすると、日本もおいおい感染国に認定され、米国への入国制限がかかるかもしれない。そうでなくても日本から戻ると2週間の隔離が強制されるかもしれない、それでは困る・・・というのが友人の言い分でした。さもありなん。

新型コロナウイルスは、感染しても数日から2週間くらいは症状が出ないことがあるだけでなく、感染しても無症状の人もいることが分かっています。その上、厄介なことに、ウイルス検査(遺伝子検査PCR)の精度も良くない。検査結果が偽陰性(陽性なのに陰性)の場合、他者にウイルスをうつす危険性があります。(WHOの解説はこちら



札幌や九州、イタリアやドイツ、フランスで発症している人の例をみても、このことは明らか。にもかかわらず、厚労省のクルーズ船対応はそのことを軽視してしまいました。

ダイヤモンド・プリンセス号に入国制限をかけたまでは良かったのですが、そこからの厚労省の対応がまずかった。最悪だったのは感染ゾーンと非感染ゾーンをきちんと分けなかったこと。この失策は岩田健太郎氏(神戸大教授)の指摘通り(この指摘を理想論だとした医者の見識にはがっかり)。

加えて、感染の恐れのある厚労省職員や検疫官を「2週間の隔離」をせずに公共空間へ出してしまったこと。管理側は感染しないと甘く考えたみたいですが、その仮定が間違っていたことは厚労省職員などに感染発覚が相次いでいることから明らかです。また乗客に関しては一度検査をしてから下船するまでの間に感染した可能性を低く見積もり過ぎました。いくら当局系の医者などが弁解しても、これではリスク評価が甘すぎ。国際的な批判が始まっていますが、後世の評価でも非は明らかでしょう。

3700人余の乗客・乗員は「全員が別々の個室に隔離」されていた訳ではありません。乗員の多くは2人1室などの相部屋だったし、乗員は高熱でもない限り仕事で船内を動き回って乗客の食事などのお世話をしていたはず。このような状況を考えると、「下船する前に2週間船内に留まらせる」よりも「下船して日本に入国した時点から2週間の隔離」というのが、意味のある2週間なのではないでしょうか。

今回の厚労省の対応について外部からあれこれ云うのは簡単だと云う意見もあるでしょう。でも、少なくとも外部の専門家からの指摘を無視して誤った方向へ暴走してしまったのも事実です。今回の対応を「作戦第一、情報軽視」だった旧陸軍と同じだ、と批判して人がいましたが、その意見に強く同意します(窪田純生 「ダイヤモンド・プリンセスの呆れた感染対策、厚労官僚はなぜ暴走したのか」)。

とくに、感染ゾーンと非感染ゾーンをロープだけで分けている写真を出して自慢していた厚労省副大臣については無能な軍部中枢を連想してしまいます(ロープ区分けではウイルスを防げません)。感染症の知識の無い者がトップに立ち、政治的な判断を持ち込んで現場をメンツで仕切ってしまうと被害の拡大を防げません。

一刻を争うような深刻な感染症には前もって法律があるわけでもなし。場合によっては超法規的な対応さえ要求されるのではないでしょうか。

まだまだ不明な点が多い今回のウイルス。残念ながら、既に中国から日本にウイルスは持ち込まれてしまいました。あるいは、クルーズ船からも厚労省職員からも公共空間に飛び散ってしまったウイルス。被害の拡大はいつまで続くのか、ワクチンはできるのか。およそ100年前のスペイン風邪のようにはならないことを心から願うところです。

厄介ですが、めげずに毎日を過ごしていきましょう。咳や発熱や倦怠感などがあれば、外出を止めて自室で過ごし、体温や症状を記録。症状が長引いたり悪化したら記録を持って受診。糖尿病や高血圧などの持病がある人、高齢の人は特に注意が必要ですから、ご用心。