家づくり実践記(15):暖房は結構難しい

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/12月号所収)    

 最近、健康住宅、健康建材なんて言葉をよく聞きます。ホンマに家だけで健康になるって言うんでしょうか?。有害物質を若干少なくしたという程度でしょ?建材の選択だけで安全な家ができるはずもないし、住まい方次第ではおかしなことになる。住まい方というソフト抜きで健康云々というのはどうもウソっぽい。

   暖房のシーズン。拙宅ではずっとデロンギ(オイルヒーター)を愛用してきましたが、電気代がかさむので 新居ではFF式の灯油ヒーターを選択。実は床暖房も考えました。しかし、普通の無垢床材とは相性が悪く、窓辺の冷気流(コールドドラフト)を解消できない等という理由でパス。輻射式温水ヒーターにも興味がそそられましたが、こっちは設備工事にお金がかかる。そんなこんなで最もコストのかからないFF式ヒーターとなったわけです。
ところが、暖房をはじめるとすぐにFF式ヒーターの欠点に突き当たりました。家中に仕掛けた温度計や湿度計によって、暖房すると部屋の上下方向にかなりの温度差ができることが明らかになったのです。拙宅で使っているのは騒音の少ない自然対流型ヒーターですが、下手すると床上と天井で10度C程度の温度差ができてしまうようです。これでは頭寒足熱どころか、全く その逆。早速、渦巻き流を起こす扇風機(ボルナド扇)を入れて、上下の温度差を2、3度以内にするように 部屋の空気をかき混ぜることにして、この欠点を解消しました。 冬でも扇風機を使うというのは面白いというべきか。いやはや暖房も結構難しいものです。
 
さて、暖房時の快適性は室温をチェックしておけば大丈夫でしょうか。否です。体が感じる温度(体感温度)とは、気温だけでなく湿度や気流、そして周囲からの輻射熱等を総合的に加味したものだから。快適な熱環境を作ろうとするなら、すきま風を防ぎ、窓辺からの冷気の輻射を押さえたり、家全体に熱を持たせて輻射熱量をあげる必要があります。とくに壁面や床面からの輻射熱は大切な要素。床暖房が良いという意見はそういう意味では妥当です。しかし、床全部を暖房するのは大変だし、床温度を上げ部屋全体を暖める燃料コストはバカにならないので、とても省エネとは言えません。
 拙宅の場合、何らかの形で家全体に熱を与えてやれば、その輻射エネルギーで暖かくなるはずだ、そう期待して熱容量の大きい土壁としっかりした木造をめざしました。これは正解だったようで、寒い日でも日射がある程度あれば暖房いらず、日射がなくてもヒーターで少し暖めてやれば家全体を暖かくすることができ、輻射熱が大きいためか室温17,8度Cで十分快適です。もう数日したら、拙宅に輻射熱温度計が到着しますので、次回は拙宅での輻射熱の実例や体感温度についてもっと考えてみることにしましょう。