1999年のプール事故関連・裁判の状況

プール事故

*以下の資料は1999/11/に体力健康新聞主催・第12回プールの水質改善を考えるシンポジウムにて「最近のプール事故及び関連裁判の状況(1999年)」と題して筆者が報告したものです。無断転載・転用はご勘弁下さい。

1)奈良、民間プールの飛び込み事故で裁判判決
 1995年12月4日、奈良県大和高田市JSS大和スイミングスクール(ダイワ企画)において成人コース(上級)に参加していた成人男子K23歳がプール飛び込み時に障害。午後6時45分頃から講師の指導でストレッチ体操後、長さ25メートル全幅13.5メートルプールの飛び込み台から逆飛び込みしたところ、プール底に頭を打ち付け第五頸椎圧迫骨折、頸髄圧迫骨折、損傷の障害。下肢麻痺、立位歩行不可能、上肢も不完全麻痺。自ら排尿できず、介護が必要な状態になった。
 プールの最深水深は1.2m、壁端はそれ未満で、飛び込み台は満水時水面から45cmの位置に設置。
 被害者とその母親が提訴し、奈良地裁は8月20日にプール側に民法717条第一項・工作物の設置又は保存の瑕疵を認め、約2億4千万円の損害賠償を命じた。内訳は逸失利益が約1億2千万円、慰謝料2千万円、入院治療費・雑費、療養介護費で約7千万円、家屋改造費約1千万円、休業被害等と弁護士費用2千万円。また、母親には慰謝料として約500万円。加えて裁判所は被害者側の過失相殺を一切行わなかった。被告側のダイワ企画はこの判決を不服とし、大阪高裁に控訴。12月より審理が開始されている。
(出典:奈良地裁判決文及び原告側弁護士資料)

2)東京都で飛び込み死亡事故
 東京都立多摩高校にて6月28日9時過ぎ体育の授業中、高校1年生男子O君が飛び込みで頸椎骨折。青梅総合病院に救急車へ搬送され、当初は死ぬようなことにはならないとの話だったが、7月5日頭蓋を開けて牽引手術。9日になって腹部に水が溜まり死亡。死亡病名は十二指腸腹膜炎。被害者は水泳が得意な方だったが、事故直後には意識があり飛び込みに失敗したことを友人に告げていたとのこと。
 問題のプールは長さ25メートルでプール中央の水深は1.5メートル。飛び込んだところ 場所は1.2メートルと 水深浅い所だった。
 7月13日学校側はPTAに対して説明会を設けたが、故意に事故当日の体育教師を出席させなかったり、事故は起こり得るので今度のことで水泳授業等を止める訳にはいかない等ということを強調した模様。(出典:本学校のPTAから有田に連絡あり)

3)東京都青梅市で排水口死亡事故
 7月23日東京都青梅市立第一小学校で5年生女生徒が排水口に吸い込まれ死亡。
 当日は夏休みに入って間もない5年生のプール指導日で、自由参加といいつつ体育授業として実施されていた。72 名(男子40 名、女子32 名)の児童が参加しており、 水泳指導員は9 名(教員7 人、女子大生の補助員2 人)が監視と指導にあったるという状況で事故発生。被害者の異変に気付いた生徒の通報で教師らが排水口から引き上げた時には意識不明で呼吸心臓とも停止していた。人工呼吸や心臓マッサージを行い、救急車で 青梅市立総合病院に搬送したが、夕方死亡。
 事件後、学校側はPTAに対して事件の説明を行っているが、原因追及・責任の所在等が全く不十分。ちなみに東京都自身のインターネットサイトでは事故内容を死亡件数で載せるのみで、例年と状況が同じであるかのように書いている。
 (出典:本学校のPTAから有田に連絡あり。また、本事件の詳細については学校PTAの父親がHPを開設している。)

4)山形県で排水口死亡事故
 7月29日山形県藤島町立長沼小学校で6年生女生徒Kさん(11がプール南西部側面の排水口に左足をひざくらいまで吸い込まれ沈んでいるのを発見、119番通報で病院に搬送したが意識不明の重体で数日後に死亡。
 事故当時プールには50人ほどの生徒が遊泳中。監視は教諭1名と高校生の補助員1名の計2名。排水口の金網は約半分がはずれており、学校側の安全点検に問題があることが判明。
 学校校長はこの手の事件がはじめてだったかのように悲痛なコメントをNHKで述べていましたが、日本全国でみれば本人が何も知らなかっただけということをコメントしただけでした。また、藤島町教育委員会と問題の学校は排水口の固定という対策をとっていないのに文部省に対策済みと報告していました。つまり、統計上は事故が起こり得ない状況だったわけですが、現実にはそうではなかったということ。さらに、藤島町が管理する町営プールの排水口も蓋が固定されていないことが判明しています。(出典:NHK放送、毎日新聞等)

5)栃木県で排水口死亡事故
 8月18日栃木県葛生町町営中運動公園内のプールで近くに住む私立高校1年生の男子生徒(15)が排水口に足を吸い込まれて意識不明の重体となり、救急車で病院に運んだが死亡。プールは水深約1.5メートルの50メートルプール。排水口には通常鉄製の格子蓋がかぶせてあるが事故時にはなかった。(出典:朝日新聞等)
*3)〜5)の排水口事件は過去に教訓が全く活かされぬ繰り返し事故です。

6)鹿児島県でプール事故学校長に業務上過失致死罪
 1994年8月5日、鹿児島県金峰町田布施小学校プールで遊泳中、排水口廻りで遊んでいた小学校5年生男子生徒が排水管に膝を吸い込まれ、いったん救助されたが死亡。被害者両親が提訴したが、原告側に4割の責任を負わせた。被害金額は、医療費1万円弱、葬儀費用120万円、逸失利益3426万円、慰謝料1800万円。
 この裁判と前後して被害者両親は学校長の刑事責任を追及し、今年7月13日鹿児島地方検察庁は当該学校長Kを業務上過失致死罪として起訴し、同日20万円の罰金刑に処した。プール排水口事件で現場責任者が刑事犯として有罪になったのは、これが初めて。(出典:鹿児島地検通知書)