生き残りバイアス

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コンビニの元店員が勝手知ったお店の金庫からお金を盗んだとのニュースあり。防犯カメラの映像から足がついたとのことですが、元店員ならコンビニのお金を仕舞い場所や頻度を熟知していたのでしょう。コンビニに限らず鍵の管理がまずいとこの手の犯罪はもっとあるのではないでしょうか。似たような犯罪はもっとあるんじゃないかと私が云うと連れ合い曰く、「ニュースになるのは表沙汰になった話だけ」。そうだそうだ、これもまた生き残りバイアスの一種です。

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株式投資ファンドにお金を注ぎ込むと10年20年で何割もアップいや何倍にもなる、だから投資しよう、という話をよく聞きます。証拠として示されるグラフを見ると、たしかにそう。でも、ホンマにそうなのでしょうか。← (追記)

もう1つ。「次はこの株が騰がる、これを買えば間違いなし」等とあなた宛に次々とメールが届くとしましょうか(昔はお手紙)。そんなの当たるはずない、詐欺だと思っていても、二度三度的中するとあれれと思い始め、さらに数回も当たるようになると、この情報はホンモノだ!買いだ!と真剣に考えて商材購入。でも、その後はさっぱりという実例があるそうです。なぜか。

理由は簡単。どちらも生き残りバイアスを使ったダマシや詐欺だから。

最初の話でいえば、暴騰するファンドはたしかにあります。バフェットさんのバークシャハサウエイやピーター・リンチのマゼランファンドなんかはその例でしょう。でも、すべてのファンドがそうでもありません。

実際のところ、思い通りの結果を出せなかったり資金繰りに失敗したりで破綻や閉鎖に追い込まれるファンドは多々。今現在存在するファンドはそんな激戦を生き抜いてきた、わずかでもプラスになっているようなモノばかり。

そういう生き残ったファンドだけで計算される成績では良い結果が出てきて当然です。でも、生き残ったモノの成績だけでファンドを評価すると、マズイものを排除しているわけですから全体像はわかりません。これを生き残りバイアスと云います。

また後者のトリックはこうです。株が騰がるか下がるかは五分五分だから、いろんな銘柄を適当に選んでメールすれば、そのうち半分くらいは当たります。当たりメールの人たちには二回目をメール、さらに当たりの人には三回目、・・・これを繰り返していけばいい(外れたら打ち切り)。5回続けて当たるのは最初の総数が一万人だとしても数百人あります。

5回続けて的中するのは二分の1の五乗だ、この情報はホンモノだ等と生半可な統計計算をしてしまうと見事に騙されます。たまたま生き残った中に入っているだけで次の当たりも半分程度。これなどは生き残りバイアスを悪用した詐欺の一種です(きっぱり)。

最初のニュースに戻ると、新聞やテレビでは警察の尽力やいろんな人の機転で盗難などの犯罪のうち解決した例が大きく報じられます。でも、その背後にはニュースにもならない未解決の事件がたくさんあるのです、多分。実際のところ、警察の検挙率があまりにも低いので警察の捏ち上げ・冤罪が話題になるのはご存じの通り。

要するに、表に出てきたものだけで世の中を見てしまうと大きな間違いを起こすということ。生き残りバイアス、知っていて損はありません。大手銀行やゆうちょ銀行でも平気でこの手のダマシを使います。ニュースになる犯罪事件でもニュースにならないものは何か、ということをキモに命じておくべきなのです(きっぱり)。

(追記)株取引を不労所得という人が多いけど、それは大きな間違い。それなりに勉強しないと会社の業績把握はできませんし、売り買いはある種テクニックというか、アートみたいなもの。生き残りバイアスも知らずに株やっているならカモられます。