脳腸ペプチド

.EcoStyle .Lowcarboあるいは糖質制限

・・・って書いてもなんのことだかさっぱりという人は多いはず。というのも、内分泌をめぐる科学的所見が以前とはすっかり様変わり。糖尿病しかり、高脂血症しかり、内分泌学もその例に漏れず、古い知識ではなかなか対応が難しい。医者や栄養士さんはそのことを認識して欲しいものです。

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人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学まず、アミノ酸がペプチド結合したものをペプチドといいます。生理学的にはホルモンなどの体内物質がこのタイプ。じゃ脳腸ペプチドとは何ぞや? その答の前に内分泌学の変貌から始めなければなりません。

以前の内分泌学の知見では、副腎、生殖腺、膵臓、副甲状腺、松果腺、脳下垂体、胸腺、甲状腺の八つの器官で内分泌ホルモンが産生分泌されるものとされていました。

ところが、80年代以降の研究で内分泌ホルモンのソースはほぼ全身に及ぶことが明らかになり、生理学は大幅な見直しを余儀なくされます。

たとえば、脂肪細胞。以前は脂肪を蓄える組織として認識されているだけだったのに、レプチンというホルモンを分泌し、脳下垂体を通じてインスリンのコントロールにも関係していることがわかってきました(最下図)。

また、グレリンやペプチドYYなど摂食や食欲に関係するものも多数見つかってきました。これらと血糖値のアップダウンとの関係や糖質摂食の影響についても明らかになってきています。ちなみにグレリンは1999年に
国立循環器病センターの児島・寒川両氏によって発見
されたものです。


という予備知識を基にして云うと、

脳腸ペプチドというのは、脳と消化管を結ぶ、いわば信号系ホルモン。以前は特定8器官だけに限定されていた信号系が、脳と腸双方に分散されているから脳腸という単語になっているわけ。それらペプチドは消化だけでなく生殖やストレスコントロールなどにも関係していることがわかっています。とくに脳腸ペプチドが摂食行動を左右しているという知見は、食事の内容や方法などを考える時に大きな意味を持ちます。

上記は、『人はなぜ太りやすいのか(肥満の進化生物学)パワー&シュルキン 2009』にあった脳腸ペプチドのリストです。インスリンやグルカゴンだけでは細かい所はわからないというのも宜なるかな、ではないでしょうか。

また、口に入れる糖質を少なめにすることで食欲を抑制することができることも上記ペプチドの知見から得られていますが、難しい医学議論をせずとも糖質制限を実践している者なら日常の実感から肯けるものでしょう。

以上、ここ数年で学んだことの受け売りでした。ホルモンバランスって言葉で、私はこれらを十把一絡げ(笑)。

インスリンとレプチンとの関係を示したチャート図(出典はR.H.Lustig『FAT chance』 2014)