広島高裁が伊方原発の差し止め判決
2017/12/14
昨日広島高裁は四国電力の伊方原発(愛媛県)の運転差し止めを命じました。日本の高裁が原発を差し止めるのは初めてですから画期的な判決ですが、大メディアの報道はバラバラ。読売・産経と毎日・東京新聞では全く正反対の論調だし、(知る人ゾ知る原発推進派の)朝日は社説にも触れない有様。見事に各社の原発問題に関する考え方の違いを浮き彫りにしました。
・・・
昨日13日の広島高裁の判決は、四国電力の伊方原発(愛媛県)は熊本県阿蘇カルデラで大噴火が起きた場合の安全対策がとれないと考え、「立地に適さない」と認定。現在定期点検中の原発再稼働再開は事実上不可能になりました。
これは3月の広島地裁判決を翻しただけでなく、全国の原発立地をめぐる議論にも大きな影響を与えることになりました。詳しい話は別サイトを参照していただくとして、私が紹介したいのは新聞各社の反応の違いです。
まず東京新聞は14日の社説で「伊方差し止め 火山国の怖さを説いた」と本判決の意義を取り上げています。曰く、3.11(東電福島原発事故)のように自然の脅威を甘くみるのではなく、「われわれが世界有数の地震国、火山国に住んでいるということ」を重視しなければならないと説いています。実に納得のいく解説で、もっともな主張です。
また、毎日新聞の社説は「伊方原発差し止め命令 噴火リスクへの重い警告」。「世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされた」とし、四国電力や規制委の評価の甘さを判決が戒めたという感じの解説となっています。先の東京新聞同様、火山国日本の現状を前提にした真摯な議論だと云えましょう。
ところが、朝日新聞の社説を覗くと、「米軍ヘリ事故 警告されていた危険」と「党首討論ゼロ あり方見直す契機に」があるだけで本判決については触れていませんでした。さすが原発推進を社是とする朝日だなぁと妙に納得しました。
一方で読売や産経はどうだったか。まず、読売新聞は「伊方差し止め 再び顕在化した仮処分の弊害」と、ストレートに本判決を批判。曰く、「原発に限らず、破局的噴火を前提とした防災対策は存在しない。殊更にこれを問題視した高裁の見識を疑わざるを得ない」とのこと。ただ、タイトルとは違い、内容は良識的で、「高裁が、新規制基準の運用上の弱点を突いた、との見方もできるのではないか」と指摘した上で、「規制委には、基準の在り方の再検討も求められる」としています。同じ原発推進派でも、朝日に比べるとこちらは横綱相撲をとっていますね。
産経新聞は本判決が気に入らなかったのか、その主張は「伊方停止の決定 阿蘇の大噴火が理由とは」でした。この主張では、「全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定」と断じ、「運転停止期間を「来年9月30日まで」と限定する自信のなさ」と誹っています。
わかりやすいといえばわかりやすい産経新聞の主張ですが、想定する破局噴火を、「あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか」とはその通り。だからこそ、そんな破局的な状況でも生き残るチャンスがあるとしたら原発のような厄介で危険なモノはない方がいいのだ、と私は考えます。
既に触れているように、日本は地震や火山噴火が活発な時代に入ってきています。カタストロフ(破局)はリスク(確率的被害)とは違います。サイコロは何度も振れますが、破局は一度起きればオシマイなのです。もういい加減そのことに気づいて欲しいと思う次第です。