トキソプラズマ

Water

 日本の関係者が取り上げない話をひとつ。1995年、カナダのブリテッシュコロンビア州で起きたトキソプラズマ原虫の水道水経由感染の件。

 トキソプラズマによる一般的な症状としては、リンパ節炎、発熱、網脈絡膜炎があります。この事件では、110人に急性のトキソプラズマ・ゴンジィ感染症状があり、15人に急性トキソプラズマ症(IgG, IgM陽性)の血清学的証拠が得られており、女性42人と11人の新生児については、95年4月24日に開始した妊娠関連スクリーニングプログラムを通じて確認されています。このトキソプラズマの感染勃発は、かつてない最大の、そして水道水経由のものとしては最初の事件であるとカナダの衛生当局は説明しています。

 疫学的調査によると、水源貯水池からの水道水が最も感染源らしいとされており、感染した飼いネコや野生のネコの糞便が浄水場あるいはその上流河川に入り、水道水へのトキソプラズマ・オーシスト汚染が起きたのではないかと考えられています。ちなみに、水源から約100km北で捕獲した5匹のクーガー全部からトキソプラズマ感染の血清学的証拠が得られています。
この事件は、従来ネコへの接触経由くらいにしか考えられていなかったものが水道水経由で起きることを証明してしまいました。ひとつひとつの病原性生物に対応しているのでは後手後手になってしまうことも予想されますから、やはり水源保護保全を重視する水道行政が求められているのではないでしょうか。
 
参考文献:Canada Communicable Disease Report, 30 Sep. 1995