えっちらおっちらアンティーブ…   ニース その3

.Travel & Taste

33_antibes 2アンティーブはニースからカンヌ方面へ向かう途中にあります。列車で20〜30分なのですが、ちょうどその日の午前中に限って点検か何かで列車が全休となっていました。なんでぇ〜な。文句を云っても仕方なし。バスに切替え、1時間かけて出かけました。

私たちを含め、アンティーブを訪れる観光客のお目当てはピカソ美術館。ピカソを楽しんだ後は美味しいランチ。午後は車をチャーターし、Le Cannetのボナール美術館へ。その後Vallaurisの国立ピカソ美術館、最後はCagnes sur Merのルノアール美術館へ。この日もまた密度の濃い1日となりました。


・・・

フランスの鉄道は突然止まる、そう聞いていましたが、まさか自分が乗る日にそんなことが起きるとは・・・。1週間前くらいだったか、ネットの時刻表を確認したら、この日は12時過ぎにならないと列車が動きません。前日から列車が消えてしまっているのです。なんやこれ?

フランス鉄道ご本家HPには何の表示も見当たりません(フランス語の読み落としかもしれませんが)。でも、ネットで調べてみると鉄道SNCFはストや点検作業で突然列車を止めることがままあるとのこと。嘆いても仕方がなし、半日無駄になるのかね〜と思っていると、連れ合いがバスを使おうと言い出しました。直ぐさまプランBが出てくるところが流石!。

34_marche調べてみると、ニースからアンティブ行き200番のバスに乗れば、1時間5分で着くようです。鉄道の20〜30分に比べれば長くかかりますが、半日潰すよりまし。幸い、バス始発のアルベール・プルミエ停留所は宿のすぐ近くだったのでラッキーでした。

さて、アンティーブはフランス人らのバカンスの場所。朝からマーケットは観光客だけでなく地元の人たちでいっぱい。どこもそうですが、市場を歩き廻っているだけで楽しくなってきますね。お昼の胃袋を考慮すると、ここは我慢のしどころです(笑)。


31_antibes 1この町の海辺にピカソ美術館があります。城砦に設けられた美術館で、海方面を眺めると海面キラキラ、バカンスのヨットやクルーザー、大型客船が湾内にゆったり停泊しているのがわかります。素晴らしい!

美術館の方は、ピカソの晩年の絵画と南仏で創作に励んでいた陶器のお皿や彫刻塑像等々でいっぱい。だって建物全部がピカソですから、作品にどっぷり浸かるという感じになります。とくに私が気に入ったのはピカソが絵を描いたお皿が大きな壁面いっぱいに数十枚並んでいたもので、なかなか見応えありでした。


30_picaso museでも、ピカソはここだけではありません。もう1つVallaurisに国立ピカソ美術館がありますし、他の画家との関係や交友が深かったマチスやコクトーとの絡みで鑑賞するとか、そういった楽しみ方がベターでしょう。ちなみに、ピカソの最晩年の住まいはカンヌ北のムージャン

問題は、地理的に離れた美術館の点と点をどう繋ぐのか。鉄道やバスを乗り継ぐのは不可能ではないのですが、時間と手間を考えると日が暮れてしまいます。タクシーを捕まえようとしても、ニース同様全く見つかりません。知らない土地でハンドル逆のレンタカーは抵抗ありで、あれこれ思案したあげく、ツアー会社に車のチャーターをお願いすることにしました。お願いしたのは、マイ コートダジュール ツアーズ

アンティ−ブのレストランで待ち合わせをしていると、やってきたのはツアー会社社長のステファニーさん。流暢な日本語は日本文学の研究者で、日本にも住んだことがあるゆえ。頼もしい。

彼女のVWセダンで向かった次の目的地は、カンヌ北のLe Cannet(ル カネ)にあるボナール美術館。2011年開館とのことですが、車がないとちょっと行きにくい。当日開催されていた企画展は「眠れる美女」。ボナールの作品だけでなく、眠っている女性の絵ばかり集めた作品展でした。

どこかで聞いたようなタイトルだなぁと思っていると、解説文にYASUNARI KAWABATAという名前を発見。あぁ、そうか、川端康成の『眠れる美女』ですか〜。くだんの本はデカダンスな名作だと評されており、欧米でも映画化されたとか。40年くらい前に読んだ記憶がありますが、連れ合いにその内容を尋ねられ、あれは変態小説だと説明しておきました(爆)。

ボナールの絵画を改めてまとめて見ていると、ルノアール的な作風を受け継いだ正統印象派って雰囲気をなのですが、批評家的にいえば日本絵画の影響を受けた「印象派とも日本の版画とも一線を画す、彼独自のもの」(Wikipedia)とのこと。よ〜わかりません。

36_valoullis 1
次の目的地はVallauris(ヴァロリス)の国立ピカソ美術館。国立の美術館といいつつ、小さな礼拝堂の中に作品が1つだけ。他にも作品があるのかと思いきや何もなし。隣接したマニエリ美術館の方にはピカソ他の陶芸作品がいろいろ展示されているのですが、国立ピカソ美術館には「戦争と平和」と名付けられたピカソの壁画が書かれているだけ。でも、それがかえって、贅肉をそぎ取った展示のようでもあり、印象的です。

picasoVLa Guerre et la Paix(戦争と平和)はピカソが大戦後、70歳の時に制作した絵を湾曲した壁面パネルに仕立てています。ピカソと戦争といえば「ゲルニカ」が有名ですが、この絵が違うのは絵画の一部に平和のイメージが提示されていることでしょうか。(右はご当地HPにある写真です。クリックすればそこに辿り着けます)

観ていると何か不思議な感覚。争い続けるのがヒトのサガだとすると、戦争は避けられないことかもしれませんが、ない方がいい。ただ、大戦を経験し多くの人たちが理不尽に殺されてきたことに怒りを感じていたピカソにとって、平和とは単なる平安のイメージではなさそうな感じ。むしろ、平和のために殺し合うヒトのサガを描写したのかもしれません。


37_vl 2もともとVallaurisは陶芸の町で、ピカソの最後の奥様はVallaurisの陶芸工房で働いていたジャクリーヌさん。晩年のピカソがここで陶器を作り始めたことで、衰退しつつあった産業が盛り返したらしい。

町の至るところに大壺や彫刻が置かれていて全体がアートな感じになっています。私たちが訪れた日には何の問題もなかったのですが、近年治安がもう1つになってきたとツアー会社のステファニーさんが嘆いていたのがちょっと気懸かりです。

そして、最後はCagnes sur Mer、ルノアール美術館へ(続く)。