ルノワールを偲んで ニース その4
2014/09/26
ルノワール美術館。というか、ルノワールが晩年の10数年を過ごした邸宅はCagnes sur Merにあります。レ・コレット(小さな丘)と呼ばれる広い邸宅には樹齢数百年のオリーブの木がいっぱい。これらの木々が伐採されるのに憤慨したルノワールがこの土地を買い取ったらしい。
その邸宅がそのまま公開されているので、彼や弟子たちのアトリエの様子や家具・備品など当時の生活を偲ぶことができますし、そこで展示される絵を楽しむこともできます。なかなか素晴らしい!
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Renoirをルノワールと読むのか、ルノアールなのか。日本ではどちらでも使うようですが、私はルノアール派。銀座の喫茶店もたしかルノアールですね。でも、美術界はルノワールとしているので、一応ここではルノワールとしておきましょう。
ルノワールは印象派の画家で、日本でも人気のある画家の1人。とくに明るい色調や豊満な姿態の絵で有名ですが、晩年は風景画をたくさん描いています。その彼が持病のリューマチの治療を兼ねて移り住んだのがニースの南西カーニュ・シュル・メールでした。
とにかく、レ・コレットと呼ばれる敷地が広い。ただ広いというわけではなく、緑いっぱいの小高い丘全体の広さです。道路から入って約百メール先の駐車場に車を止め、そこから美術館入り口を抜けても、邸宅までは上り坂で3分はゆうにかかります。
ガイド役のステファニーさんがこちらもどうぞと教えて下った方向に向かうと、どこかで見たような納屋がありました。その正面に絵画のパネルがあり、モデルとなった小屋と絵の対比ができるようになっています。明るく暖かい雰囲気の小屋は実物の雰囲気そのもの。なかなか面白い趣向ですね。
また、邸宅の中をぐるぐる回ると、家の壁には彼の作品が飾られ、まるで邸宅美術館なのですが、一方で彼が使っていたイーゼルやキャンバス、それに厨房のオーブンやコンロ、お風呂まで見ることができるので、なかなか趣き深い。
テラスに出ると、北はニース、南はアンティーブまで海や街を見渡すことができます。この景色も素晴らしい。こんな景色の中で毎日過ごしていたらヒトは哲学的になるのか、それとも怠惰になってしまうのか、少なくとも安らかな気持ちを保つことはできそうです。ちなみに、梅原龍三郎さんもこの家に居候していたらしく、企画展では梅原作品も出てくることがあるとのことでした。
ルノワールの晩年の明るい画風は、ここレ・コレットの空気そのものです。光の演出でも何でもありません。一枚の絵を(ちょっと見にくいけど)見て下さい。この景色は彼の邸宅の前面の景色で、その現在が次の写真です(2014/9/7現在)。光の加減がいっしょなのがよくわかります。思うに、ルノワールは自然の光をとり立てて強調することなく、そのまま描き込める環境に素直に馴染んでいたのではないでしょうか。私はそんな気がします。
絵を絵だけで楽しむのではなく、絵が描かれた環境の中で鑑賞する愉しさ。ルノワール美術館ではそのことを実感させてくれました。サンクス、いやメルシーか。
午後のAntibes以降の行程は車がなければほとんど無理でした。レンタカーを使わないとしたら、ツアー会社の車をチャーターするのは有効な手段です。とくに人数がそれなりなら割安でしょう。それにしても、この日もたくさんの作品を鑑賞してしまい、消化不良気味の1日でした。