そして父になる

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話題の映画です。興業成績もなかなからしい。ということで、先日夫婦で映画館へ観に行きました。少し気になることもありましたが、映画は二重丸で、いろいろ考えさせられる内容です。

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まず、ストーリーに引きつけられる。出産時に取り違えられたこどもと、そうとは知らず、大きくなるまで育てた親たち。ある日その事実を知らされ、親たちはいったい何を考え、悩み、そしてどうするのか。そして、こどもたちは・・・・・。一言でいえば、そんなところ。

この映画は映像がいい。とてもいい。撮影監督は瀧本幹也さん。ふ〜〜ん、なかなか日本映画も捨てがたいね〜と思っていたら、「ブルータス」(2013/10/15号)に氏の写真集「バウハウス・デッサウ」(2005年)の紹介があり、尋常でない視点と構成にびっくり。ひと味違います。撮った映像が従来の日本映画の映像と違うはずですな〜。

監督の是枝さんもそうだけど、撮影の瀧本さんも昔の伝統的な日本映画のシガラミ?から少し自由な雰囲気が二重丸。その辺が外国でも受けた理由かもしれません。

で、皆が皆が褒めるので何ですが、私たち夫婦が気になった点・引っかかった点を少し。

まず、タイトル。「父になる」視点はいいけど、母親も悩み苦しむんです。そこが何故か甘い。「そして親になる」ではなぜダメだったんでしょう? 台詞の一部には父権主義的なものもあり、何か最後まで気になりました。

加えて、原作にあたる奥野修司さんの「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」(1995年)には制作後に事後連絡したとかで、原作を参考文献扱いとは何か変。

演技でいえば、残念ながら福山雄治さんの演技がもう1つ。言葉使い過ぎ。動作や目で表現できない(しない)のは監督の演出かもしれませんが、どうも作った感じがして、のめり込めませんでした(私だけだったらご免)。

一方で、リリー・フランキーさんは自然で、ホンマに演技してるんかいな〜です。米国でのリメイク権を手に入れたスピルバーグさんがリリーさんを絶賛していたというのも肯けます。そして、尾野真千子さん、真野よう子さんの母親陣も素晴らしい。福山さんは随分回りの3人に助けられた、って感じでしょうか。

そんなこんなですが、映画自体はなかなか面白いですよ。最後に流れるグレン・グールドのバッハが実に効果的で、泣けてきそうでした。