「技術と人間」一時休刊

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知る人ぞ知る雑誌の「技術と人間」が一時休刊するということになりました。70年代から公害と技術との問題に肉薄し、反戦や原発問題でも最先端を走り、いろいろと貴重な、そして大切な情報を提供してきた雑誌でしたが、残念至極。
その最終号が今日手元に届きましたが、偶然その号に拙稿も載っています。それは別にアップするとして、気骨のある雑誌が休刊することを非常に哀しく思います。…

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『技術と人間』という雑誌は、(株)技術と人間が発行しているもので、創刊以来30年の長寿雑誌。そういえば、学生時代に京都の古本屋さんで創刊当時のバックナンバーを買い込み、時間を忘れて読み耽った記憶があります。残念ながら、読んだ内容よりも最初の判型がA4版程度で大きかったことだけしか覚えていないのは私の未熟さゆえ。それから30年。その本が経営難によって「一応の整理をつけるため本号をもって廃刊」とのこと。まともな本が読まれないのはいったいなぜか。小泉某のような人物がもてはやされる時代だからといえばそれでオシマイですが、それが時代の流れなのだとしたら、哀しさだけでなくイヤな雰囲気を感じます。

この雑誌は、もともとアグネ社という技術系出版社が出していたのを現在の高橋社長が独立して出版社を作り、発行したものです。70年代当時反公害運動華やかなりし頃、反技術論とかイデオロギー色の濃い原稿がたくさん載っていましたが、一方で現場主義を貫く方々の貴重なレポートもいっぱいありました。いずれの作品にしても、これからの時代をどう歩んでいくべきか、その方向性を熱いタッチが紙面いっぱいに展開されていました。内容も多岐にわたり、反戦平和、原子力発電などの環境問題、遺伝子組み換え、監視社会、映画評論……。最初に知る人ゾ知ると書いたのは、環境問題とか公害問題などに関心がある人たちにとって、この雑誌は羅針盤のような役割を果たしていたからです。
私自身はといえば、分野の違う話は毎度新鮮でしたし、知っている内容気になる話については友人らと夜を徹して議論したこともありました。今から思えば、私にとっては教科書や参考書のようなものだったのかもしれません。
不思議な縁で、いつしか私も数本の原稿をこの雑誌で発表させてもらいましたが、思えば、その経験が文筆業を志す自信のひとつになったのかもしれません。また、拙著『あぶない水道水』の書評まで強引にお願いしたこともありましたので、今回の原稿依頼がやってきた時には半ば恩返しの気持ちもありました。でも、それが最終号だと知ったのは原稿の校正中のことで、しばし言葉を失ってしまいました。でも、『技術と人間』社の株券を譲渡すること以外、私にできることがなかったのが残念です。

長い間、貴重な得難い情報満載の雑誌をご提供下さり、本当にありがとうございました。再刊の可能性もあるらしいとのことですので、少なからず期待しています。

(2005年10月20日 記)

さて、最後にここをお読みの方にプレゼントです。最終号が若干冊手元に届きましたので、3名の方にその号を進呈いたします。欲しい理由読みたい理由を私までメールして下さい。できれば、その理由か、あるいは感想を是非ここにアップしたいので、それが可能な方を優先させていただきます(お名前表記は相談)。なお、応募者の方が多い場合はお許し下さい。