タイ その2 色とニオイ

.Travel & Taste

9月中旬タイに行きました。はじめての訪泰です。
10年以上前からタイに証券口座を持っていたり、ダルニー奨学金制度に参加していたり、私にとっては馴染みの深い国であるにもかかわらず、一度も訪れたことがなかった不思議な間柄。今回行ってみて、実体験としていろんなことを知りました。タイ旅行シリーズ、8回分+を予定しています。

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タイという国を色で表現するなら、キンキラの金色と暗いドブネズミ色(全くの独断です、念のため)。このレンジの中に熱帯特有のビビッドな原色が蠢いている、そんな感じ。

キンキラ金色は云うまでもなく仏像や仏塔の金色。おまけにスケールが大きいので迫力が凄い。圧倒されそうです。インドや中国では街の金ショップに大勢の人だかりがしていますが、タイではそんなことはありません。でも、タイの金メッキを見ると、個人の御利益はさておき、まず仏教施設にゴールドが集約しているという印象です。それもまた一種のタンブン(功徳)なのかもしれません。

ところが、バンコックのダウンタウンはドブネズミ色。立派な家屋や華やかなビルが立ち並んでいる街中でも下水道などのインフラはまだまだという雰囲気で、道を歩くと所々で下水臭を感じてしまいます。運河沿いには水道も下水設備もないようなバラックに棲む生活者も散見します。日本の昭和30年代より劣悪です。

たとえば香港では町場にオイスターソースと食材の入り交じった香りが漂いますが、タイはどちらかというと下水臭に近い。どこから来るかといえば、やはり都市インフラの不備からでしょう。訪れたのが雨期だったせいかもしれませんが、雨が降ると水は道に溢れ、雨が上がると異臭が立ち上るのは少々閉口しました。昨年の洪水被害の対策はなかなか進んでいないみたいですね~。こりゃまたいずれ浸かるな(苦笑)。

でも、雨期であることのメリットもあります。いろんな花が咲き誇り、果物が美味しいということ。これはウエルカム。

バンコックで泊まったアリヤソムヴィラの庭にはこちらが名前も知らないような花々がいっぱい。出されるフルーツといえば、ドラゴンフルーツは日本で食べるモノとは段違いだし、マンゴーも味が深い。バッションフルーツは沖縄で食べるのと変わらないけど値段がずいぶん違うんだろうなぁ。ふだんなら真っ先に手を出すだろうマンゴスチンには触らず仕舞いでした(苦笑)。

花やフルーツだけではありません。住んでいる人働いている人もビビッドで逞しい(そう感じました)。トゥクトゥクのあんちゃんは元気だし、屋台や街頭のお店の人たちが活き活きしているのは、疲れた顔つきが目立つ日本とは大違い。とくに地元の人が行くようなお店に行くと人の熱気がダイレクトに伝わってきます。当然といえば当然ですが、右肩上がりの国だということを実感させます。

お堅い仕事の人たちもなかなか逞しい。バンコックで泊まったホテルのごくごく近くが世界的にも有名なバンムラート病院。そこのエントランスはまるで帝国ホテル。一方でここの看護師さんが病院横のソイ1の食堂で食事をとっているのを何度も見かけましたが、その食堂とは屋台に毛が生えたような倉庫みたいなところ。衛生環境ははたして大丈夫なのかと訝しくなるような場所で、あまりの落差に唸ってしまいますが、わずかな時間に談笑しながら食事をかっこむ様には逞しさを感じてしまいました。これがタイなのでしょうね、きっと。



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というわけで、タイに関する私の印象は、キンキラゴールドとドブネズミ色、下水臭の中でビビッドに展開される人々の暮らし…、これでした。チェンマイでは異臭が薄れますが、代わりに埃っぽさが表出します。清潔な日本に慣れているとちょっと抵抗です。もちろん、わずか9日間の旅ですから、単なる感想の域を出ていないといえばそうかもしれません。でも、私はそう感じます。

タイのビビッドさを別の面でいえば、昔を忘れさせる変化。つい2年前はタクシン支持派と反対派が暴動を起こし、バンコック市内各所を占拠していた時に破壊されたビルが綺麗に立て直されていたり、取材の日本人カメラマンが軍関係者の銃撃で殺されてしまったりした話など跡形もなく飲み込んで大きく変わっています。凄まじいというか、逞しいというか、とにかく勢いあり。これもまた、右肩上がりの国の強みというのかもしれません。

ところで、9月14日(金)空港から市街中心まで車でかかった時間はなんと3時間10分! ふだんなら1時間、かかっても2時間くらいとのことですから、地元の人もそりゃ大変だ!というくらいの大渋滞。リムジンだから良かったものの、タクシーだったら如何なることになっていたことか。市街から空港に向かった19日の朝はわずか25分で着いたので、やっぱり3時間超は異様です。

なぜこんなことが起こるのかといえば、都市交通量に道路整備が全く追いついていないから。当局も手を拱いているわけではなく、BTSや地下鉄をどんどん延伸させようとしています。でも、それが追いつかないほど街が発展しているということなのでしょう。5年後10年後のバンコックがどうなっているのか、ちょっと気になります。